Photo by Tsuneo Koga

ニューオーリンズの音楽シーンを凝縮した1枚

 2015年にレーベル発足第一弾として、ニューヨークの音楽シーンの現状を捉えた『MELTING POINT』を発表したMFAレコードが、第二弾として、ニューオーリンズの音楽シーンの現状を捉えた『NOLA REVISITED』を発表した。腕利きのミュージシャンたちがスタジオで一緒に音楽を生み出すワクワクした雰囲気は2枚のアルバムに共通しているが、ニューヨークの音楽からは心地良い緊張感、ニューオーリンズの音楽からは人懐っこさが伝わってきて、それぞれの土地の空気感を捉えた、音によるドキュメンタリーとしても興味をそそる作品になっている。

THE NEW ORLEANS FUNK ALL-STARS NOLA REVISITED MFA RECORDS(2017)

 これら2枚の制作で重要な役割を果たしているのが、プロデューサーでありベーシストでもあるNori Naraokaだ。今はニューヨークを拠点に置いているが、2005年のカトリーナ台風直後まではニューオーリンズで活動しており、『NOLA~』にミーターズのジョージ・ポーターJrやダーティ・ダズン・ブラス・バンドのカーク・ジョゼフといった“お歴々”が参加しているのも、その頃からの人脈によるものである。

 「ニューヨークから久しぶりに戻ってきて、最近の様子をうかがうつもりで、昔の仲間たちと『もう一回何かやってみる?』みたいな気持ちでこのアルバムを作りました。ボー・ドリス・ジュニア率いるワイルド・マグノリアスや、ジョン・“パパ”・グロのバンドは、僕もメンバーだったことがあるし、僕の歴史を知る人たちが集まって演奏してくれた感じですね」

 アルバムはマルディ・グラ・インディアンの歌で幕を開け、70年代をほうふつとさせるニューオーリンズ・ファンクやブラスバンド、ニューオーリンズでは意外にも珍しい、キューバの香りを湛えたスティーミーなバラッドなど、新旧の音楽スタイルが共存するこの街のシーンを凝縮している。

 「『MELTING~』もそうでしたが、スタジオにはとりあえず人だけ集めて、あとは何も決めていませんでした。1バンドあたり2時間で2曲ぐらいずつ作りながら録音していったんです。プロデューサーとしての仕事は、音楽の方向性を指示するとか、仲の良くない人同士が顔を合わせないようにするとか(笑)。録音の日を忘れていた人もいて、それもまたニューオーリンズらしいんですよね(笑)。実際の録音は1、2テイクでオッケーでしたし、オーバーダブも編集もほとんど必要ありませんでした。ほとんど録音した時のままの音をアルバムにできて、すごく嬉しいです」

 YouTubeで「nola revisited」で検索すると、アルバムの録音の模様を収めた動画がご覧いただけるので、ぜひチェックしていただきたい。