INTERVIEW

吉松隆 『交響曲第6番≪鳥と天使たち≫ マリンバ協奏曲≪バード・リズミクス≫』

12年ぶりとなる新作交響曲には楽しい要素がいっぱい

吉松隆 『交響曲第6番≪鳥と天使たち≫ マリンバ協奏曲≪バード・リズミクス≫』

 大河ドラマ『平清盛』でシンフォニックな音楽世界をドラマに合わせて展開し、話題となった作曲家・吉松隆。彼の新作CDがリリースされる。昨年初演された交響曲第6番《鳥と天使たち》、2010年の作品であるマリンバ協奏曲《バード・リズミクス》の2作をカップリングしたものだ。吉松は若い頃から現代音楽の中では最も演奏機会に恵まれないと言われる交響曲というジャンルに挑んで来た。第5番は2001年の初演だったので、第6番は12年ぶりの交響曲となる。

 「もともと50歳までに交響曲を5曲書く、というのを目標にしてきたので、それはいちおう達成出来たという想いも。そして大河ドラマでは、大量のオーケストラ曲を書く事になり、それも大変だった。そんなことでちょっと放心状態だったところへ、小さめの編成のオーケストラのための作品を依頼されたのがきっかけで、交響曲第6番が生まれることになりました」と吉松。大阪のいずみホールを拠点に活躍するいずみシンフォニエッタの委嘱作品として、交響曲第6番は2013年に飯森範親の指揮により初演された。

 「日本にはいくつも優秀な小編成オーケストラがあって、そういう団体のために作品を書きたい想いはあったのですが、今回それがようやく実現しました。交響曲第6番ということで、第5番のような重い世界観の作品ではなく、もっと『田園』的で『オモチャ』の要素も含んだ交響曲を指向しました」

飯森範親,三村奈々恵,いずみシンフォニエッタ大阪,山形交響楽団 吉松隆:交響曲第6番≪鳥と天使たち≫ マリンバ協奏曲≪バード・リズミクス≫ Columbia(2014)

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 《鳥と天使たち》は吉松が作曲家を志したころからこだわってきた重要なイメージ。それが全3楽章の交響曲の中に様々な形で表現される。第1楽章は「右方の鳥」、第2楽章は「忘れっぽい天使たち」、第3楽章は「左方の鳥」と各楽章のタイトルも面白い。その初演を筆者も聴きに行ったのだが、第2楽章にはトイピアノなどの様々なオモチャの楽器が登場し、作品全体が非常にカラフルな色彩感とリズム感に満ちていた。そしてその録音を聴いてみると、さらに細部の楽器の動きなどがよく分かる。

 「最近の録音は本当に解像度が高くて、ライヴでは気がつかないような部分もちゃんと再現していますね」

 交響曲第6番ということで、歴史的な交響曲第6番の引用もあり、聴きながらクスッと笑ってしまう時もある。そこも吉松流の楽しさであると思う。

 そしてカップリング曲は、マリンバ奏者三村奈々恵のために書かれたマリンバ協奏曲《バード・リズミクス》。2010年に書かれ、飯森範親指揮の京都市交響楽団が同年に初演。今回の録音は、2011年の飯森指揮、山形交響楽団の定期演奏会の記録用ライブ音源を使用している。

 「マリンバという楽器は僕のオーケストラ用の作品には欠かせない楽器。そして三村さんという素晴らしいマリンバ奏者に出会ったことで、この協奏曲は生まれました。まず驚いたのは、こんなに長い作品なのに、三村さんは最初から暗譜で演奏していたこと。マリンバは両手にマレットを持って演奏するから、自分では譜めくりが出来ない。それで、常に暗譜なのだそうですが」

【参考音源】藤岡幸夫指揮、三村奈々恵、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏による “マリンバ協奏曲≪バード・リズミクス≫”

 

 マリンバを独奏にすることで、吉松が悩んだのはマリンバの音をオーケストラに埋没しないようにすることだったと言う。

 「マリンバ特有のロール奏法で演奏すると、どうしても音が際立たない。そこでオーケストラの弦楽器をピィツカートにしたら、弦楽器奏者からはピィツカートが多くて、指が痛いというクレームがきてしまった(笑)」

 しかし、この協奏曲のタイトル《バード・リズミクス》のように、リズムがまるで万華鏡のような変化を見せる楽しい作品である。こちらも全3楽章である。

 さらに新譜の情報も。吉松の最も初期の作品であるピアノ曲『優しき玩具』もCD化される。ギター曲への編曲などで知られる作品だが、そのオリジナルのピアノ曲を収録(ピアノ/河村泰子カメラータトウキョウ)。若き吉松がまるで日記のように書き綴っていたピアノ曲から選んだ作品で、そこに吉松の作曲家としての原点を見る事も出来る貴重な録音となるだろう。

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