ルーツ回帰人気の火付け役で、新世代の絶対的王者としてレゲエ好きにはすっかりお馴染み、そうでなくてもジョーイ・バッドアスらの作品を介して気になっていた人は多いでしょう。若き天才シングジェイが待望久しい初のアルバムを投下しました。バーリントン・リーヴィ使いのオープニングから口元は緩みっぱなし。というのも、父クロニクルはバーリントンの後継者として活躍した人物です。次曲ではその父も交え、自身の出自を誇り高く表現。で、序盤に古参のリスナーを黙らせ、そこからルディメンタルとのディープ・ハウス調やゴスペリッシュな美スロウなどトレンド感を打ち出しながら、クロスオーヴァー・ヒットを狙っていきます。複雑な譜割りや変化に富んだフロウをマイルドな歌声でいとも簡単にこなしていく――その姿を確認すれば、彼が狭い枠に収まる器でないことくらいすぐにわかるはず。クロニクスというスターと同じ時代に生きている喜びを、いま私は猛烈に感じています。