INTERVIEW

TLC『TLC』 ラスト・アルバムをきっかけに改めて検証する、史上最強のガールズ・トリオが残したレガシーと進行形の輝き

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  • 2017.08.10
TLC『TLC』 ラスト・アルバムをきっかけに改めて検証する、史上最強のガールズ・トリオが残したレガシーと進行形の輝き

時代を作った革命的なトリオが最後にやり残していたこと――奇を衒わずに飾らないTLCらしさを貫きながら、過去のレガシーと現代のリヴァイヴァル・サウンドをポジティヴに繋いだラスト・アルバム『TLC』

私たち以外は入れない

 オリジナル・アルバムとしては約15年ぶりとなる新作『TLC』。リアリティ・ショウやライヴなどがあったにせよ、普通ならばとっくに忘れ去られてしまっているだろう長期のインターヴァルに加え、愛くるしい眼と力強いラップでファンを魅了したレフト・アイの不在、しかも逆風が吹きすさぶレコード業界の状況。いかにビッグな彼女たちであっても、いや、むしろレジェンド的な存在だからこそ、簡単にリリースできる状況ではなかったはずだ。そんなTLCをサポートしたのはほかならぬファンたちである。TLCが2015年に開始した新作制作のためのクラウドファンディングは、わずか3日で目標額を達成するという大成功を収めた。さすがにこれには当事者であるチリも驚いたという。

TLC TLC 852 Musiq/ワーナー(2017)

 「本当に驚いて、言葉にならなかったわ。〈もっとあなたたちの音楽を聴きたい〉って言ってくれる人たちはいたけれど、実際にKickstarterでこんなにも支援してもらえたんだもの。私たちにとって、何よりも特別なありがたい出来事だったわ」。

 クラウドファンディングという現代的な手法で資金調達したのは、何も経済面だけが理由ではない。彼女たちは、みずからが資金を握ることでクリエイティヴ・コントロールをみずから掌握することにこだわった。

 「最初のレコーディングをした時に良かったのは、LA・リードとベイビーフェイスが私たちのやりたいように作らせてくれたってことなの。それは彼らがアーティストでもあるから、理解があったからだと思うんだけど。いまは彼らと組んでいないから、(レコード会社には)TLCの音楽のタイプや、何が有効なやり方かを理解しない人たちもいると思うのね。私たちは自分たちのやり方を崩したくなかった。Kickstarterを使うことで自分たちのやり方を維持することができたのよ」。

 プロデューサー陣の核には、チリが「とても優秀」と紹介するカーノイ(T・ボズの弟)と共に、ロン・フェアが据えられた。ロンは、クリスティーナ・アギレラやキーシャ・コールを手掛けてきたレコード会社のエグゼクティヴで、同時にエンジニア/アレンジャー/ミュージシャンでもある。

 「彼を起用した理由は、音楽のことや私たちのことを理解しているから。TLCの音楽を作るうえで歌詞の内容がとても大事で、それがメインだということをわかってくれてたわ」。

 ところで、新作の制作面でもっとも気になったのはレフト・アイの穴をどうするのかという点だった。一時は、伝記TV映画「CrazySexyCool: The TLC Story」でレフト・アイ役を演じ、またステージ共演も経験したラッパーのリル・ママが新作にも参加するのでは?という憶測も流れていたが、結局のところ、レフト・アイの代役は立てられなかった。

 「ええ、それを望んだことは一度もないわ。このグループには私たち以外は誰も入れないの。TLCは実際の私たちよりも大きな存在なのよ。もし、代わりを入れることが可能だったのなら何年も前に起こっていたはずよ」。

 

これが最後のアルバム

 レフト・アイ抜き(正確にはインタールードに登場する)の『TLC』の仕上がりはと言えば、彼女たちがこだわったクリエイティヴ・コントロールのおかげなのだろう、作品はTLCらしさを少しも損なわず、彼女たちならではの魅力に溢れている。フューチャリスティックに攻めてみたり、シンプルなアコギの伴奏で歌ってみせたり、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスをネタ使いして土臭く迫ったりと、多彩なスタイルを用意しながら、低域のT・ボズと高域のチリの特徴的な二枚看板でちゃっかりポップに響かせるマジックは健在だ。そんなTLCワールドに唯一ゲストとして迎えられたのがスヌープ・ドッグ。参加曲“Way Back”はまさに彼向きのGファンク調だ。

 「VH1のTV映画(『CrazySexyCool: The TLC Story』)が公開された後に書いた曲なのよ。今回の制作を始めた時に、セッションを振り返って選んだの。やって良かったわ。“Way Back”はすごく気分が上がる夏の曲だから。フィーチャーするアーティストを考えた時に、唯一頭に浮かんだのがスヌープだったの」。

 ファンクと言えば、アース・ウィンド&ファイアの“September”とボビー・ヘブの“Sunny”をダブル使いしたファンキーかつキャッチーな“It's Sunny”も久しぶりのアルバムを祝う打ち上げ花火のように煌びやか。

 「アース・ウィンド&ファイアの大ファンなのよ。“September”の引用はロン・フェアのアイデアで、彼がホーン・セクションのミュージシャンたちをスタジオに呼んでくれたの。マイケル・ジャクソンの『Thriller』で演奏した人たちだったから、すごく興奮したわ。それから“Sunny”は、T・ボズのアイデアで入れることになったのよ」。

 15年ぶりというのが信じられないほどの揺るぎない魅力を見せつけてくれるTLCだが、なんとこれが最後のスタジオ・アルバムになると宣言している。

 「ええ、これがTLCの最後のスタジオ・アルバムよ。でも、ツアーなどの活動は、続けられなくなるまで、ずっと続けるわ」。

 うーん、ファンとしてはこうもすらっと言い切られてしまうと撤回の余地がなさそうで寂しい限りだが、何せファン想いのTLCのことである。ファンがどうしても新作が欲しい!と声を上げればもしかすると最後が最後じゃなくなるかも? その前にまずは「来年行けたら」という来日公演を期待しましょう。

 

『TLC』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

 

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