これが最後のアルバム

 レフト・アイ抜き(正確にはインタールードに登場する)の『TLC』の仕上がりはと言えば、彼女たちがこだわったクリエイティヴ・コントロールのおかげなのだろう、作品はTLCらしさを少しも損なわず、彼女たちならではの魅力に溢れている。フューチャリスティックに攻めてみたり、シンプルなアコギの伴奏で歌ってみせたり、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスをネタ使いして土臭く迫ったりと、多彩なスタイルを用意しながら、低域のT・ボズと高域のチリの特徴的な二枚看板でちゃっかりポップに響かせるマジックは健在だ。そんなTLCワールドに唯一ゲストとして迎えられたのがスヌープ・ドッグ。参加曲“Way Back”はまさに彼向きのGファンク調だ。

 「VH1のTV映画(『CrazySexyCool: The TLC Story』)が公開された後に書いた曲なのよ。今回の制作を始めた時に、セッションを振り返って選んだの。やって良かったわ。“Way Back”はすごく気分が上がる夏の曲だから。フィーチャーするアーティストを考えた時に、唯一頭に浮かんだのがスヌープだったの」。

 ファンクと言えば、アース・ウィンド&ファイアの“September”とボビー・ヘブの“Sunny”をダブル使いしたファンキーかつキャッチーな“It’s Sunny”も久しぶりのアルバムを祝う打ち上げ花火のように煌びやか。

 「アース・ウィンド&ファイアの大ファンなのよ。“September”の引用はロン・フェアのアイデアで、彼がホーン・セクションのミュージシャンたちをスタジオに呼んでくれたの。マイケル・ジャクソンの『Thriller』で演奏した人たちだったから、すごく興奮したわ。それから“Sunny”は、T・ボズのアイデアで入れることになったのよ」。

 15年ぶりというのが信じられないほどの揺るぎない魅力を見せつけてくれるTLCだが、なんとこれが最後のスタジオ・アルバムになると宣言している。

 「ええ、これがTLCの最後のスタジオ・アルバムよ。でも、ツアーなどの活動は、続けられなくなるまで、ずっと続けるわ」。

 うーん、ファンとしてはこうもすらっと言い切られてしまうと撤回の余地がなさそうで寂しい限りだが、何せファン想いのTLCのことである。ファンがどうしても新作が欲しい!と声を上げればもしかすると最後が最後じゃなくなるかも? その前にまずは「来年行けたら」という来日公演を期待しましょう。

 

『TLC』に参加したアーティストの作品を一部紹介。