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運命の3人が揃ったその時、歴史は動いた。90年代を代表するR&Bグループは世界を席巻して最強無比のガールズ・ユニットとなった。トリオが勢揃いする姿を見ることはもう叶わなくても、そのレガシーはいまなお進行形の輝きを放っている!

 今年を代表するアルバムのひとつとなりそうなエド・シーランの『÷』だが、その先行カットとして記録的なヒットとなった“Shape Of You”の〈比較〉騒動はまだ記憶に新しいかもしれない。同曲はTLCの“No Scrubs”(99年)に似ているとネット上で話題になり、結果的には“Shape Of You”のソングライターに“No Scrubs”の作者たちを加えて素早く解決された。その是非や真偽はともかく(そう思って聴けば……)、TLCが残してきた影響力の大きさや楽曲のポピュラリティーを改めて痛感させられる出来事だったのではないか。そして、そんな2017年、TLCが長らく待たれていた新作『TLC』をいよいよリリースした。

 てな話題が書き出しにあまり相応しくないとしたら……件の“Shape Of You”に前後したケラーニの初作『SweetSexySavage』が、表題からして『CrazySexyCool』(94年)を彷彿させるものだったことを思い出しておきたい。彼女のような20代アーティストたちによる90年代R&Bヒットの発見/引用が普通のこととなっている昨今、そういえば昨年も“Creep”をベタ敷きしたゼンデイヤ“Something New”があったり、遡ればクリス・ブラウン&タイガの“Better”(2015年)、本家のT・ボズを招いたエリック・ベリンジャーの“Creep”(2015年)、トリー・レインズ“T.L.C.”(2014年)、加藤ミリヤ“STYLE”(2014年)といったふうに、そのリサイクル例はコンスタントに見つけることができる。

 一方で、そうやって意図的に90年代リヴァイヴァルの風潮と結び付ける必要がないのも事実だ。当時のシーンにおいてもズバ抜けて高いセールスを上げて世界中に知れ渡ったTLCだからして、例えばベット・ミドラーが“Waterfalls”の素晴らしいカヴァーを残していたり、バスティルが“No Scrubs”の替え歌“No Angels”を出しているくらい、彼女たちの楽曲のいくつかが普遍的なポップ・クラシックとなっているのは確かである。そうでなくても、成功の秘訣となったキャラクター性やファッションは90年代の時点からSPEEDやスパイス・ガールズ(その現代版ともいえるリトル・ミックスがデビュー作にT・ボズを招いたのも頷ける)に影響を与えていたわけだし、その広がりゆえにハイムのような後進が敬愛を語るのもわかる気がする(そう考えれば、モーリス・デイとハイムの共演も違って見えてくるだろう)。そのようにある世代にとってはもはや説明するまでもないグループではあるが、このページでは駆け足ながらそのキャリアと過去の名作を簡単に紹介しておきたい。