INTERVIEW

売れる/売れないは人の判断だけど何をやるかはすべて自分―竹上久美子、育児が変えた〈音楽をやる意味〉を岩崎愛と語る

竹上久美子『slow boat』

シンガー・ソングライターは1人だからこそ周りのチームが大切

――『助走とロンド』も拝聴したんですが、その頃とはやはり声の表現が変わってきているような気がします。特に“Lifework Song”の歌声はすごく優しくて、子守唄のようです。それには、出産を経たことも関係しているのかなと思ったんですが。

岩崎「子どもを産むと、声が変わるってよく言うじゃないですか。お母さんになって、何か自分自身の実感として変わったこととかありましたか?」

竹上「私は結構、ありましたね。昔から、立ってカーンって歌うことは得意だったんですけど、もっと力を抜いて歌ったらいいのにって言われていて。でも、どうやってリラックスしたらいいのかやり方がわからなかったんですね。頭で考えてもどうしてもできなかったんですけど、子どもに歌うときって大声で歌わないですよね。生声で子守唄を歌うときの声って、誰しもが力を抜いて歌えてる状態。〈あ、こんな感じやったんやな〉みたいな感じでできるようになったんです」

岩崎「子守唄が練習になってたんですね、すごいな(笑)」

――歌詞についても伺いたいです。先ほども出た“Yesterday’s Curry”には〈昨日の夜は カレーを食べたいと思って/真夜中 100円ローソンで 買い物をして/せっかく作ったのに 朝陽がのぼるころ/何だか嫌になって ぶちまけてしまいたいのさ〉という歌詞があって、これってものすごく生活の実感に根ざした歌詞だと思うんですね。岩崎さんの歌詞の表現にも通じるところはあるのかな、と思うんですが。

竹上「生活のことを歌詞にするところは通じあってるかもしれないですね」

岩崎「“yesterday’s curry”の歌詞、めっちゃわかりますよね。例えば、この人と呑みたいって思って約束してもその日までちょっと憂鬱になるんですよ。だから、約束しないで〈今日、どう?〉ぐらいのほうが本当は気楽で嬉しい」

竹上「共感してもらえて嬉しいな。歌詞は私、ごちゃごちゃと複雑なことを入れてしまいがちなんですけど、愛ちゃんはシンプルな言葉で〈伝わるな〉って感じがしますよね」

 2015年の会場限定EP『種を蒔く朝』収録曲“yesterday's curry”。『slow boat』には“Yesterday's Curry”としてリミックス・ヴァージョンを収録
 

――例えば岩崎さんの“最大級のラブソング”はとても真っ当なメッセージソングですよね。愛しい人に向けた最大級の愛が痛いほどまっすぐに歌われていて。

岩崎「プロデューサーの後藤(正文)さんの影響ですかね。生活感が漂いすぎる曲を送っても、あんまり反応してもらえなくて(笑)。〈ちょっと見えすぎてるから、隠したほうがいいよ! 股閉じて!〉みたいな感じ(笑)。もちろん、その生活感が見えたほうがおもしろいし入りやすい場合もあるんですけどね」

竹上「シンガー・ソングライター同士だと、歌詞のこととかって話しづらいよね」

岩崎「そうなんですよ。その人のこだわりとか思いが詰まってるじゃないですか、そこに何か言うって言うのは勇気がいることだと思うんです。だから後藤さんみたいに率直にアドヴァイスしてくれる人には感謝してますね」

岩崎愛の 2016年作『It's Me』収録曲“最大級のラブソング”
 

竹上「確かに、私もアルバムのタイトルを決めるときにいろいろ小難しいのを考えちゃって結構大変だったんですけど。みんなで会議をしたときに〈初めての人から、それで敬遠されたらもったいないから素直なタイトルにしたいね〉って意見があって〈確かにそうやなぁ〉と。客観的な人とディスカッションして、歌詞とかタイトル決めるのって大事やなぁって初めて思いましたね」

岩崎「みんな、言いにくいんですよね(笑)。私、曲とかアルバムのタイトルが最初はめっちゃ適当で(笑)。いま作ってる曲も〈マクド〉とか〈ウォーキング・デッド〉とかなんですよ。後からいろいろ考えて変えるんですけど結局、ややこしいのじゃなくて〈はい!〉みたいな短いタイトルしか出てこないんです」

竹上「タイトルだけじゃなくて、曲のアレンジもそうですけど見極めが大事ですよね。チームの人たちと話し合って決めるのはすごく大切なことだと思う。シンガー・ソングライターって、基本一人だからバンドへの憧れってのはずっとあると思うんですよ。私も中学生から大学までバンドやってたんですけど、いつもどこか合わなくてうまくいかなくて」

岩崎「ダメなんですよね、わがままなんで。でも、私も宅録をやりはじめてから音でディスカッションできるようになって、だいぶ楽になったんですよ。それまでは〈ピーっとした感覚〉とか言って弾いてもらってて(笑)」

竹上「確かにこの曲はこういうイメージですってザックリと伝えられるから、それでプレイしてもらうとすごく話が早いですよね」

 

売れる/売れないは人の判断。だけど、どういう作品を作るのかは自分たちがやること

――そうした作り手としての変化がありつつ、お二人が音楽を始めてからいまに至るまで、〈続けている理由〉とはなんなのでしょうか?

竹上「もともと、あんまり考えて音楽をやってないんですよね。悲しいって気持ちになったときに、悲しいって伝えるよりも先に曲を書いてきたんです。ただ、排泄物のように曲を出して、それが〈売れたらいいなぁ〉って思ってたときもあったけど、いまはただ楽しいからやってるだけですね。さっき、子どもができてから変わったことありますかって訊かれましたけど、子どもって人間やから思い通りにならないんですよ。人生もそうだと思う。売れるか売れないかは人の判断だし。だけど、どういう作品を作るのかは、ぜんぶ自分たちがやることだから。自分でコントロールできることに関しては、死ぬほど努力してがんばろうと思っているところですね」

岩崎「私も完全に楽しいから、音楽やってる感じですね。学生のとき、ライヴがあるからって午後の授業は休んで、制服のままギター担いでライヴに行くみたいな生活をしていて……本当に音楽以外に何もなくて……だから、やるしかないんですよね」

竹上「お互いに〈売れたい〉ってガツガツしてたんですけど、もうね(笑)」

岩崎「もう好きなことをやらかし散らしたいみたいな感じになりましたね(笑)。売れたらそりゃいいだろうけど、売れるためにこういう音楽をやるみたいな考えはまったくなくなりました。人に曲をもっと書きたいなぁとか、いろいろなクライアントからリクエストもらって音楽作るのはいいなぁって思ったりしますけどね」

竹上「それ、わかるなぁ。“月は”は、鴨川のデルタでお月見をするという地域の商店街が主催したイヴェントがあったんですけど、もともとは〈そのテーマ曲を書いてくれ〉と言われて作ったんですよ」

岩崎「〈この曲をあの人が歌ったらいいだろうな〉とか〈こういう歌詞を書いたら伝わり方が違うんじゃないか〉とか、そういうふうにワクワクしながら考えたり、創作したりするのがすごく楽しいんですよね」

――今日はありがとうございました。お二人は、9月3日(日)に渋谷の7thFLOORで行われる竹上さんのリリパ〈竹上久美子『slow boat』release party~東京編~〉で、久しぶりの共演が控えていますね。

竹上「私はすごく楽しみにしてます、東京行くのも久しぶりなんでね。今日は本当に話せて良かったです。会うのも3〜4年ぶりぐらいだったし、私、全然同業の友達いないから(笑)。楽しかったなぁ」

岩崎「私も今日はすごく楽しかったですね。アルバムの曲をライヴで聴けるのも、いまからすごく楽しみにしてます!」

 


Live information
〈竹上久美子『slow boat』release party~東京編~〉(昼公演)
2017年9月3日(日)渋谷 7thFLOOR
開場/開演:12:00/12:30
料金:前売り ¥3,000 当日 \3,500円/小学生以下無料
出演:竹上久美子's paper moon till dawn
Opening Act:TANAKA OF THE HAMADA
Special Guest:岩崎愛

 

■竹上久美子
2017年8月9日(水)四条河原町OPA9階 タワーレコード京都店
〈タワーレコード京都店インストア・ライヴ〉
2017年9月18日(月・祝)吹上 鑪ら場(たたらば)
〈竹上久美子『slow boat』release party~名古屋編~〉
出演:竹上久美子’s paper moon till dawn/そらしの/HoSoVoSo/キキヤマユイ(ハンカチーフス)
2017年10月14日(土)
〈竹上久美子『slow boat』release party~京都編~〉京都 UrBANGUILD
出演:竹上久美子’s paper moon till dawn/杉瀬陽子/チーナ
★詳細やその他のライヴ情報はこちら

 

■岩崎愛
〈岩崎、夏の歌祭り〉
2017年8月4日(金)東京・渋谷TSUTAYA O-nest
開場/開演:18:30/19:00
料金:前売り ¥3,000 当日 \3,500円(いずれも1D要)

2017年8月5日(土)~6日(日)大阪・舞洲スポーツアイランド
〈WEST GIGANTIC CITYLAND'17〉
2017年8月12日(土) 大阪・梅田ムジカジャポニカ
〈岩崎家お里帰り~岩崎慧×岩崎愛~brother & sister vol.11〉

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