アルカンやゴドフスキーなど圧倒的難易度の楽曲から、近年はモーツァルトやハイドンの録音を充実させてきたアムラン。そんな彼が新たに挑んだのはニューヨーク楽派の巨人モートン・フェルドマン。晩年は音数が極端に少ない楽曲を書き続けたフェルドマンだが、その集大成とも呼べる作品が高弟に捧げた長大なピアノ曲《For Bunita Marcus》。72分間の中に恍惚と緊張感が共存する音楽は荘厳さすら感じられる。思えばアムランの音楽でここまで音数が少ない録音も珍しい。“現代のヴィルトゥオーゾ”の名を恣にした彼が魅せる静寂の音楽、それは確実な技巧で裏付けされたからこそ説得力のある演奏になったのだろう。