お互いに10年の経験をプラスして、復活したTHE TRIO
言葉にしなくても共有し合える信頼関係こそが、このトリオのリアリティ!

 小曽根真が、THE TRIOによる新作『ディメンションズ』を出した。そのTHE TRIOとは、ベーシストのジェイムス・ジーナスとドラマーのクラレンス・ペンを擁するピアノ・トリオ。2007年まで10年もの間活動し、毎年アルバムをリリースしていた。

小曽根真 THE TRIO ディメンションズ ユニバーサル(2017)

 「(ビッグ・バンドの)No Name Horsesがスタートし、さらにクラシックの音楽活動に僕の時間が取られてしまったんです。だから、クラレンスとジーナスには申し訳なかったけど、トリオを休止することにしました。でも、ちょうどあの頃からクラレンスはマリア・シュナイダー(・オーケストラ)とやるようになったり、ジェイムスもハービー(・ハンコック)のツアーで忙しくなったんです」

 ペンは今年のマリア・シュナイダー・オーケストラの来日公演にも同行し、鋭敏なドラミングで屋台骨を支えている事実を周知させた。一方、ジーナスはハンコックのバンドがエレクトリック編成であるので、そこではエレクトリック・ベースに専念し、新しいアーティスト像を出している。

 「3年前にNYのブルーノートでボブ・ジェイムスがプロデュースした〈ミュージック・フォー・トゥモロウ〉というウィル・リーやビル・エヴァンスやマイク・スターンらが出たコンサートで、この3人で久しぶりに1曲やったんですよ。そしたら、それまでずっとセッションの音が続いていたところ、僕たちが演奏した途端にバンドの音に変わり、騒がしかった会場がシーンとなった。その時に、やっぱりこのトリオはすごい。またやってみたいと思ったんですよ」

 しっかり新しい曲をやりたい。THE TRIOの再スタートにあたり、彼はそう思ったという。

 「やるなら、ちゃんとツアーをやりたいと思ったし、新しい曲を用意したかった。それで、僕のトリオのための曲を書きたくなり、去年の暮れぐらいから猛烈な勢いで書き出しました」

 録音は今年の2月にNYのブルックリンで行われ、その作業は3者の阿吽の呼吸が内在する9曲に結実。それらは、時の流れというのは素晴らしいと、聴く者に思わせるのではないか。お互いをもう一度見つめ直し、とてもフレッシュな心持ちで録音にあたったことが分かる精気が、そこには満ちる。

 「本当にその通りです。何も昔と変わっていないんです。でも、10年が経ち、3人がそれぞれいろんな所で経験を積んできたことが、このトリオの音楽に出てきた。なんか、すごく音楽の重心が低くなった気がしましたね。後から音を聴き直して、休んでいる間のいろんな出来事を口にしなくても共有し合えているトリオのリアリティを感じました」

 この10年間は、小曽根真がクラシックの世界にもおおいに進出した時期でもあった。そして、例えば“ミラー・サークル”という曲にはそちらの経験の妙もまた瑞々しく出ている。

 「この曲やバラードの“シルエット”とかは、特にクラシックの影響が出た曲ですね。別に狙ったわけではないんですけど、こういうふうに出てきちゃったんです。そして、クラレンスもジーナスも何も言わないのに、それに対応してくれる。二人ともクラシックの経験も持つので、音が本当に綺麗なんです。音色のボキャブラリーがたくさんあるというのは、この世代のミュージシャンには特徴的なことだと思います」

 この9月には、早速この3人による日本ツアーが持たれる。そして、10月には5年目となる〈Jazz meets Classic〉という公演で、バーンスタインの“交響曲第2弾 不安の時代”を含む演目をやることになっている。

 「この作品については、僕自身はこれまで何回も演奏する機会がありましたが、今回は通常のオーケストラ公演とは違って、ジャズ・ドラマーのピーター・アースキンが初参加。一緒に新しい表現も取り入れて演奏する予定で、とてもエキサイティングなステージになりそうです!」

 


LIVE INFORMATION

小曽根真 THE TRIO ツアースケジュール 2017年
○9/5(火)・6(水)19:00開演
会場:ビルボードライブ大阪
○9/7(木)KUMAMOTO JAZZ 2017
会場:熊本県立劇場コンサートホール
○9/8(金)・9(土)・12日(火)・13日(水)
会場:ブルーノート東京
○9/10(日)いわてジャズ2017
会場:岩手県民会館
makotoozone.com/

Music Program TOKYO
小曽根 真&ピーター・アースキン “Jazz meets Classic” with 東京都交響楽団
○10/14(土) 16:20開場/17:00開演
会場:東京文化会館 大ホール
○10/15(日) 14:20開場/15:00開演
会場:オリンパスホール八王子
出演:小曽根 真(p)ピーター・アースキン(perc)/ダレク・オレス(b) *第2部のみ/リオ・クオクマン (指揮)*第1部のみ/東京都交響楽団 *第1部のみ
曲目第1部 バーンスタイン:「キャンディード」序曲/バーンスタイン:交響曲第2番「不安の時代」
第2部 ジャズ・セッション
www.t-bunka.jp/