INTERVIEW

雨のパレード“Shoes”〈4人なりのノスタルジック〉を追い求めたシンセ・サウンドが映す、あの頃の青春映画のようなエモーション

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  • 2017.08.28
雨のパレード“Shoes”〈4人なりのノスタルジック〉を追い求めたシンセ・サウンドが映す、あの頃の青春映画のようなエモーション

それでも僕らは走り出す――〈4人それぞれのノスタルジック〉を追い求めたシンセ・サウンドが映すのは、あの頃の青春映画のような瑞々しいエモーションで……

 〈リスナーのポップス感に変化をもたらしたい〉という思いで制作された2作目『Change your pops』から約5か月、雨のパレードよりニュー・シングル“Shoes”が届けられた。表題曲は7月から放送中のTVドラマ「下北沢ダイハード」のエンディング・テーマだが、ライヴハウスや小劇場が点在する〈下北沢〉という街を舞台に演劇界の新鋭たちが書き下ろした1話完結のダイハードな物語に対し、4人は80年代のシンセ・ポップ色が強いサウンドを提供。バンド初期は頻繁に下北沢のハコで演奏していたという彼らがここに当てたイメージは〈青春〉や〈少年心〉だというが……。

雨のパレード Shoes スピードスター(2017)

 

僕らなりのノスタルジック

――“Shoes”はドラマのエンディング曲になることが前提で書かれた曲なんですか?

福永浩平(ヴォーカル)「そうですね。最初に〈下北沢という街をテーマに書いてほしい〉っていう話と、ドラマのプロットをいただいて。内容を確認したら何となく走ってる映像が思い浮かんだんで、僕的には〈青春〉とか〈少年心〉をテーマにノスタルジックなものをいろいろ詰め込んで」

――その〈走っている映像〉というのは?

福永「『トレインスポッティング』(96年)の最初のシーンとか、(挿入歌の)アンダーワールド“Born Slippy(NUXX)”のMVとか、青春映画のイメージですね。それこそ、前に言ってたじゃないですか。〈『シング・ストリート』(2016年)観てみたら?〉って。

――ああ、『Change your pops』の取材で。“Take my hand”の歌詞は全国民の兄のつもりで書いたとのことだったんで、〈お薦めの兄〉が出てくる映画を推しました。

福永「あれから観たんですよ。〈お兄ちゃんが良い〉って言ってたのもわかったし、あのぐらいの年代感の曲はやっぱりいいなあと思って。あと『ウォールフラワー』(2012年)も好きですし、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(98年に日本公開)とか、青春映画は好きだなと思ってたところだったんで、“Shoes”は『シング・ストリート』も意識して作りましたね」

――ああ、それでこういう音に。あの映画の舞台は85年のダブリンで、14歳のバンドをやってる主人公は、デュラン・デュランも参考にして曲を作ってましたもんね。

福永「あと、伏線としては、CDを買ってた世代を振り向かせたいっていうか。例えば〈宇多田ヒカルさんがCDを出しました〉となったら、今、売れてるとされるバンドよりも遥かに売れるっていうのは、CDを買ってた世代がもう一度振り向くからじゃないかって。それもあって、今回は音色をノスタルジックにしたりしていて。もちろん今の人たちにも向けてるんですけど、上の世代の人たちにも響くような歌詞にしてたりとか、あとMVとかジャケットの帯とかも、ちょっとクスッと笑ってしまうような、ベタな感じにして。昔のLPみたいなすんごい太いゴシック体で、〈雨のパレード/シューズ〉ってカタカナで書いてある(笑)。〈答えなんてない! けどじっとしていられない!〉ってキャッチコピーも僕が自分で書いて。それと、MVも全部フィルムで撮って懐かしい作りにしました。アプローチもアナログのズームイン/ズームアウトの感じをあえて入れたり」

――そんな時代感にピッタリといいますか、今回は少しニューロマ風味もあって。

福永「ただ、僕ら全然通ってないんで、〈僕らのなかのノスタルジック〉っていう感じなんですよね。(ベースの是永亮祐に向かって)ベースもね? ムスタングっていう竿の種類があるんですけど」

是永「低音が普通のものよりは出ないベースで、弦も張りっぱなしにして。しかもティッシュを貼り付けてミュートして」

福永「弦に軽く当てると音がちょっとこもるんですよ。〈ボーン〉って鳴るのが〈ボン〉って感じになる」

――弦を張りっぱなしにっていうのは?

是永「昔の人はレコーディングによって弦を変えてなかったりするんで、モータウンのミュージシャンをちょっと意識したり。新しい弦は芯がありすぎたりするんで、それでティッシュを貼ったっていうのもあるんですけど、今回は音が伸びないことを意識しました。ビートルズみたいなイメージもちょっとありつつ」

――あと、ドラムの音も良いですね。

福永「スネアの音とかホントにベタな感じにトライしながら作り上げてて、〈これでしょ!〉っていうものになりましたね。(ドラムの録音時には)オンマイクとオフマイクっていうのがあって、オフマイクは遠くから録って声とかと混ぜたりするものなんですけど、オンマイクもあえて遠目から録ったり、オフだけで録ったりとかで、昔の空気感を追求して。フレーズもあえてずっとただの8ビートだったり、ベースも8分で刻んでたり。“Shoes”は構成も音も、〈ベタ〉なものがハマる曲で。〈ノスタルジック=ベタ〉みたいなところがあるかな」

――その音のほうのひとつの象徴が、やっぱりシンセの音ですよね。

福永「ソロの部分は、ミニローグっていう去年の年始に出たKORGの優秀なアナログ・シンセサイザーのプリセット2番をそのまま使ってて。昔のジュノっていう名機みたいな音で、〈うわ、この音ヤベエ!〉ってなるやつです(笑)。僕ら世代はだいたい20年、30年前の音がカッコイイって思える感じじゃないですか。だから今だったら80年代から90年代にかけての音を普通にカッコイイって思うんですよね。トロ・イ・モワの新譜(2017年作『Boo Boo』)もすっごい良かったし」

――あと、“Shoes”は歌詞も良いなって。

福永「ありがとうございます。実は、今回の4曲中、残り3曲は『Change your pops』のときにもうレコーディングまで終わってて。単純に曲数が多かったので漏れた3曲なんですけど。だから、今年に入って書いたのは“Shoes”ぐらいなんですよね。心に余裕があったんで(笑)、良い意味で力を抜いて書けました。去年は列伝ツアー(去年2~3月に行われた〈スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR〉)を経て結構熱くなってて、ライヴも然り、歌詞もこう(一方向しか見えていない仕草)なってたんですよね」

――ただ、内容はこれまでの方向性に準じる、聴き手の背中を優しく押してくれるタイプのもので。言うなれば、先ほどの話の全国民の兄のつもりで書いた……。

福永「“Take your hand”。あの曲はアルバムの中でも人気があって、僕もMV作りたいなって思ってたぐらいだったんで、それは今回、ちょっと意識して書きましたね。やっぱり青春映画をバーッて詰め込んだ感じです。漫画ですけど(松本大洋の)『ピンポン』もそうですし、『スタンド・バイ・ミー』(86年)も音を出さないで、映像を流しながら書いたりとか。あと、今回は書く前に走ったんですよ。いつも外に出歩いて書くんですけど、何となく走ってみたら止まらなくなっちゃって(笑)。めちゃくちゃ走ったら、歌詞がバーッと出てきました」

 

二極化がこのバンドの良さ?

――あと、カップリングについてもお訊きしたいんですが、“Thunderbird”は構成が相当ミニマルですね。

福永「サビとAしかないかも。この曲は最初の〈パーパーパ・パーパーパ♪〉っていうシンセの音からセッションで作っていって」

――そこからどこへ向かおうと?

福永「ムラ・マサとジャスティン・ビーバーみたいな(笑)。ムラ・マサっぽい緩急あるセクションだったり、あとは……このときはジャスティン・ビーバーの“What Do You Mean?”(2015年)が出たばかりの頃で。超カッコイイ、こういう曲作りたいと思いながら制作してたかな」

――どちらも抑制されたトーンのダンス・ポップですよね。そうした方向性に対し、ベースはどういうアプローチを?

是永「この曲はチェロみたいな音色で〈ん~~~♪〉っていう部分をやっていて」

――あの不思議な低音、ベースなんですね。

福永「あっ、このとき確か、(FKA)ツイッグスとかも意識したのかな。音色を攻めようっていう。ムラ・マサもベースがいきなりなくなったりとかそういうパターンが多かったり、ツイッグスの『M3LL155X』(2015年)もめちゃくちゃ攻めた音色だったから、〈かっけえ!〉ってなってたときだと思いますね」

――それで、ベースもさまざま音を試して。

是永「フレットレスで、歪ませてやったら意外といいかもっていう。スロウ・アタックみたいな、パーンって弾いてもホワーンって音が出るようなエフェクターがあって」

福永「それで歪ませたり、リヴァーブかけたりディレイかけたりっていうのと、フレットレスって音が〈ド・レ・ミ〉って上がるんじゃなくて、〈ウィ~~~ン〉って(一音一音が連結したように)上がれるってもので演奏してるんで、より弦バスっぽく聴こえるんですよね」

――そして次は“Voice”。これまでの2曲はギターレスですが、ここからの2曲はギターも入ってバンド・サウンドが前に出て。

福永「“Voice”はめちゃくちゃ前の曲なんで。去年の夏前ぐらいかな? “stage”(昨年末のシングル)より前に出来てました。そこからホントにいろいろ方向転換して、歌詞も全部書き直して、やっと完成形に辿り着いたって感じです。でも最終的にいい形になりました」

――全編に散りばめてあるギターのフレーズが印象的で。

福永「ね? あれもすっごく手を加えたから(笑)。これ、録ったあとにもエフェクトかけたり、いろいろやってみたっていう珍しいパターンの曲です。あと、ちょっと言えないような大手術をしたりとか(笑)」

――その大手術とは……。

福永「……ここはカットでお願いします(笑)」

――(笑)ただ、大手術をした甲斐あって、キャッチーさは増した気がしますね。

福永「もうね、大胆に変えましたから(笑)」

――そこまで迷ってよく完成形に落ち着きましたね……。

福永「ホントですよ! そこはもう、僕たちの技量が高かったってことで(笑)」

――(笑)自画自賛が出たところで、最後は“Hollow”ですね。これはアコギとクラップが全編を引っ張っていくナンバーで。

福永「アコギの曲は初ですね。僕が10代の頃に買ったアコギをうちのギタリストに弾いてもらいました。もともとは弾き語りで持ってきた曲なんですけど」

――ああ~、弾き語りだけでも成立しそう。

福永「そうなんですよね。いろいろアレンジを試したんですけど、結果的に弾き語りで成立してるなってことで、弾き語りがあったうえで、少しバンド・アレンジにして肉付けしていった感じですね」

是永「それでベースはギターに寄り添うというか、フワーッとした感じで弾いていて」

福永「竿はなんだっけ?」

是永「ドラゴンフライ。五弦で、上のほうまで音が出るやつで、音選びは自分的に結構気に入ってます。ギターに寄り添いつつ、ただ、間奏ではアヴァンギャルドな、裏で蠢いてるようなフレーズを弾いてたりもしますね。そこは攻めたいなっていう気持ちもあって」

――これで4曲を振り返りましたが、今後の曲には今リスナーとして聴いていらっしゃる音楽性が表れてきそうですね。

福永「そうですね。今、作ってる曲は二極化してきてて。最近のXXとか、インディーR&Bシーンのちょっとハイテク寄りな音の感じのやつと、めっちゃ懐かしい、80~90年代みたいなのの二種類がどんどん出来ていってますね。でも“Shoes”系かっていうとそうでもなくて、ジョン・メイヤーっぽいやつだったりとか、昔のマルーン5、あとはシンディ・ローパーみたいなのとか。イメージ的には攻めた、クールなことだけやってるアルバムを作りたいっていうのがあるんですけど、やっぱ嫌いじゃないから、なんかそういうのも作っちゃうんですよね(笑)。でも、このバンドの良さはそこなのかなって。それと、最近はヒップホップかな、作ってみたいのは。SZAも歌モノだけどノリは全部ヒップホップみたいな感じで、出たばかりのアルバム(『Ctrl』)がすげえカッコイイなと思って。ああいうものもやってみたいですね」

――では、その二極化した曲たちの完成形が、作品化の時点でどう出てくるかですね。

福永「僕らのなかでは二極化ですけど、みんなが聴いたら〈いろんな曲がある〉とか、逆に〈みんな一緒〉とか、いろいろな意見があるような気がするなあ」

――そこも含めて楽しみにしております。

福永「はい、がんばります!」

 

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