デビュー作の意識に立ち返った昨年の『Coolaid』に続き、今回も〈回帰〉を主題にしているのは、若き日の写真を用いたジャケが示す通り。ただ、ウータン“C.R.E.A.M.”と同ネタで幕を開け、ATCQ使いやフーディニのカヴァー、BDPネタでのKRS・ワンとの合体、スリック・リック本人を招いた“Moment I Feared”のリメイクなど、今回の肴はデビュー前後の彼が純粋にリスナーとして親しんできたNYクラシックたち。ゆえにビズ・マーキーを取り上げた96年の“Vapors”がバトルキャットのリミックスで収まろうと違和感はない。一方、オクトーバー・ロンドンをファレル風に歌わせた“Go On”などをテーマを忘れて詰め込むサーヴィス精神も毎度の彼らしさか。趣味丸出しの楽しさを共有できる気ままな快作!