COLUMN

エバ・ジェルバブエナ来日! 「踊る」ことの彼方を見つめる―現代フラメンコの可能性を更に深化させるエバ

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  • 2017.09.01
エバ・ジェルバブエナ「Apariencias仮面」より(C)Alberto Rojas

「踊る」ことの彼方を見つめる
現代フラメンコの可能性を更に深化させるエバ

 日本はスペイン本国にも勝るとも劣らないほど、フラメンコにご執心の国である、とはよく言われる。逆に、スペインはどれほど日本の伝統舞踊に興味をもってくれているのか。アンバランスは火を見るより明らかだ。あの赤い大地で、スペイン女性が着物を着て日本舞踊に興ずる姿は想像し難い。

 その点、現在最高のフラメンコ舞踊家のひとり、エバ・ジェルバブエナが前回2014年の来日公演のとき、日本舞踊に対して本気で学習意欲を見せていたのが忘れられない。エバの舞踊団の東京公演がすべて終わり、これから関西方面に移動しようとする日の朝、滞在中のホテルでコーヒーを飲みながら彼女と話をした。エバは日本での舞踊の歴史について次々と質問をし、わたしが拙い知識をもとに答えるという展開だった。熱心にノートをとる姿は、舞台でカリスマ的な魅力を発揮する国際的な舞踊家とはまるで別人だった。このあとエバは京都で京舞の本格的な稽古を受けたと聞く。

 堰を切るようにパトスがほとばしるフラメンコと、抑制の隙間から幽かに漏れる感情の陰影を美とする日本舞踊は、対極にある。エバ・ジェルバブエナのような舞踊家だけが、舞台の上でその双方を生きることができる。エバは高度なテクニックに誰よりも習熟し、その魅力を鮮やかに発揮できるばかりではない。ほとんど動かないときでさえも、無二のバイラオーラ(女性ダンサー)として、言葉にならない情緒の深い渦に観客を巻き込むことができるのだ。

 今回の2作品は、以前の来日公演にも増してそのことを肌で感じさせてくれるものになりそうだ。「¡AY! アイ!」(2013年)は、ミュージシャンたちがフラメンコ曲を奏し歌うなかで、エバがソロで踊りつづける。具体的な物語を踊るというものではないが、さまざまな姿態が呼び起こす多様な感情が潮のように寄せては引いてゆく。国や文化の違いを超えて、根源的なものがそこに波打っている。ソロであればこそ、エバの魅力をまるごと体感できる代表作である。

 「Apariencias 仮面」(2016年)では、エバの最新の仕事の充実ぶりを余すことなく知ることができる。スペクタクル性、実験性に富みながら、フラメンコの魅力が全開する。冒頭エバがスキンヘッドで現れたり、アフリカ系の歌手が土着の歌を歌ったり、ユニークな展開もあるが、なんと言っても男性4名の群舞と魂の火花散るようなエバのサパテアード(足踏み)は圧倒的だ。コンテンポラリーな作風でありながら、根底にはフラメンコのパトスが揺らめいている。

 エバならではの2作品は、「踊る」ことの彼方にあるものを見つめる。内側に向かう探究心と、外側に向かう身体が拮抗し、融和し、現代フラメンコの可能性が更に深化しているのだ。

 


INFORMATION

エバ・ジェルバブエナ フラメンコ舞踊団
○9/16(土) 16:00開演 「¡AY! アイ!
○9/17(日) 15:00開演 「Apariencias 仮面」
会場:Bunkamuraオーチャードホール
出演:
舞踊/エバ・ジェルバブエナ
ギター/パコ・ハラーナ
パーカッション/アントニオ・コロネル
歌(カンテ)/ジョナタン・レジェス、アルフレド・テハーダ、アラナ・シンケイ※2
バイオリン/ウラジミール・ディミトリエンコ※1
舞踊※2 クリスティアン・ロサーノ、ダビ・コリア、アンヘル・ファリーニャ、フェルナンド・ヒメネス、マイセ・マルケス
※1「¡AY! アイ!」のみ ※2「Apariencias 仮面」のみ
※出演者が変更になる場合がございますのでご了承ください

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