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マウント・キンビー『Love What Survives』 自由な気風と歌心で〈ポスト・ダブステップ〉の向こう側へ進んだニュー・アルバム!

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  • 2017.09.08
マウント・キンビー『Love What Survives』 自由な気風と歌心で〈ポスト・ダブステップ〉の向こう側へ進んだニュー・アルバム!

〈ポスト・ダブステップ〉という記号はもういらない。より自由なエナジーとアグレッシヴな熱気に溢れたサード・アルバムは、オリジネイターたちの逞しいサヴァイヴァルを証明する!

 「これまで自分たちの成功の基盤だったものを、すべて払拭することから始まった」(カイ・カンポス)。

 カイ・カンポスとドミニク・メイカーによるUK産のユニット、マウント・キンビー。カイが言うところの〈成功の基盤〉が何を意味するのかはさておき、待望久しかったサード・アルバム『Love What Survives』が過去の繰り返しを回避して新たなマウント・キンビー像を彫塑せんとする意識から創造されたものなのは間違いない。

MOUNT KIMBIE Love What Survives Warp/BEAT(2017)

 思えば、ポスト・ダブステップ時代の到来を告げた2010年のファースト・アルバム『Crooks & Lovers』からは7年の月日が過ぎ去っている(とはいえ、ここから“Adriatic”をネタ使いしたチャンス・ザ・ラッパーの“Juke Jam”は記憶に新しいところだろう)。そして、アブストラクトな意匠とライヴ・サウンドの接合に臨んだワープ移籍作『Cold Spring Fault Less Youth』(2013年)は、自分たちの歌唱を挿したダンス・トラック“Made To Stray”やキング・クルエルの起用も話題を呼んで、文字通り〈ダブステップ以降〉のエレクトロニック・ミュージックを提示する大きな一撃となった。以降はケリスらのリミックスを手掛ける機会もありつつ自分たちのリリースは途絶えていたのだが、馴染み深いDJコーツェが率いるパンパのコンピレーション用に久々の新曲“Bells_5”を発表したのが2016年。ただ、それから1年後、今回のアルバムへ向けての先行カット“We Go Home Together”は盟友ジェイムズ・ブレイクを迎えたメランコリックなダウンテンポとなり、より感情的でソング・オリエンテッドな作風へ転じた新たなマウント・キンビー像を提示することになったのだった。

 彼らのライヴ・メンバーを務めたこともあるジェイムズ・ブレイクといえば、互いが広く世に出る前からの仲で、並走しながらポスト・ダブステップ時代を引き寄せてきた間柄でもある。最近ではジェイZの『4:44』に収録の“MaNyfaCedGod”をジェイムズとドミニクで共同プロデュースしてもいたが、こうした新たな展開はドミニクが昨年ロンドンからUS西海岸に移り住んだ結果の産物でもあった。

 そのままロンドンに住まうカイとは物理的な距離が生じるわけで、当初は異国での暮らしにも馴染めなかったというドミニクだが、それもやがては新たな創作のインスピレーションとなり、「拠点を変えたことが本当に功を奏したね」(ドミニク)との言葉通り、結果的には互いにロンドンとLAを行き来するという制作スタイルがアルバムにポジティヴな影響を及ぼしたという。

 「『Love What Survives』の印象は、前作とは全然違うね。前回はやたらと暗い記憶しかなくて、今回はとても明るい。それはたぶん、友人たちと一緒にアルバムを作り上げるという作業がもたらしてくれたものだと思う。実際、他のアーティストとコラボしながら創作することによって、ちょっとしたしがらみのようなものから解放されたよ」(ドミニク)。

 そんな新作の大半で使用されたのは、KORGのMS-20とデルタ、たった2台のヴィンテージ・シンセだという。その「パンキッシュかつジャンキーで、ロバート・ワイアット的な音質」(カイ)を活かしたサウンドメイクは、無機質でインダストリアルな感触と粗削りなプレイの融合によって、ライヴ・パフォーマンスでの姿にも通じるエネルギッシュなものとなった。なかでも「人が演奏しているようなドラムマシーンのサウンドと、機械が演奏しているようなアコースティック楽器のサウンド」(カイ)で編まれた彼ら流のクラウトロック“Audition”や曲名まんまな“Delta”に象徴される、ある種のニューウェイヴ~ポスト・パンク感覚は大きな収穫だろう。

 前作から続投のキング・クルエルが“Blue Train Lines”にシブい歌声を捧げるほか、先出し済みの“Marilyn”にはミカチュウが、サイケなクラシック・ロック風の“You Look Certain(I'm Not So Sure)”にはライヴ・メンバーも務めるアンドレア・バレンシー(エアヘッドの“Autumn”でもお馴染みだろう)がそれぞれ迎えられ、「マウント・キンビー版の完全にブッ飛んでるポップソングだ」と語るドミニクがみずから歌った“T.A.M.E.D”までヴォーカル曲も充実している。結びは再度ジェイムズを招いた静謐な“How We Got By”。10月にはyahyelをゲストに迎えた来日公演を大阪と東京で行うマウント・キンビーだが、生気に満ちたこの新作がどう再現されるのか非常に楽しみだ。


LIVE INFORMATION

MOUNT KIMBIE - JAPAN TOUR 2017
GUEST: yahyel
○10/6(金) 大阪 Fanj Twice
○10/9(月・祝) 東京 WWW X - "WWW & WWW X Anniversaries"
OPEN 18:00 / START 19:00
前売TICKET¥6,000(税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: BEATINK 03 5768 1277 [www.beatink.com]
[チケット発売中]
東京公演:e+ [http://eplus.jp/mk-y/]、チケットぴあ (P:336-579)、LAWSON(L:71349)、BEATINK [shop.beatink.com]、Clubberia
大阪公演:e+ [http://eplus.jp/mk-y/]、チケットぴあ(P:337-044)、ローソン(L:54458)、BEATINK[shop.beatink.com]

朝霧JAM
○2017/10/7 (SAT) ~ 10/8 (SUN)
富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
http://asagirijam.jp/