巻を進めるほどにその存在感をますます強めているモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全集。2015年に録音されたこの第4集は、2016年来日時の全曲演奏会第4回で演奏されたソナタ8曲と変奏曲1曲を曲順含めそっくりそのまま2枚に。繰り返し驚かされるのは、今ここで音が生まれたと聴き手を惑乱させるくらいの鮮度の高い音楽が展開されていること。冒頭に置かれた円熟期の傑作K.377の第2楽章で聴かれるような、ごく自然で、だがくっきりと意志を伴って語られる情感。初期ソナタが凛々しく弾かれた後にやってくる変奏曲の哀切。ディスク全体に刻まれたその音楽の豊かな起伏は、いやおうなく聴き手を魅了する。