トロピカル・ハウスの出現を契機として一気にピッチダウンしたメインストリーム界隈で、スーパースターDJの挙動に注目が集まるなか、ひと足早くカルヴィン・ハリスはアマいファンク路線でいち抜け。そして、我らがスティーヴ様はイエロー・クロウやダブズら盟友と共謀し、ミーゴスやリル・ヨッティら旬のラッパー勢を招き入れながら、トラップやフューチャー・ベースといった近年のヒップホップのトレンドとも合致したイキのいいサウンドでアルバム一枚作っちゃったのです。宇宙一のパーティー・モンスターにジャンルをとやかく言うのはナンセンスというものですが、もともと作風に幅があるとはいえ、ここまで予見できた人はいないでしょう。ただ、アゲ一辺倒だった狭義の〈EDM〉は縦軸を登り切った感もあり、本作において彼は横軸でプロデューサーとしての力量を見せつけた形で、これがスティーヴ流の最新パーティー・ミュージック。変容というよりは進化。ケーキ投げてるだけじゃないのよ。