INTERVIEW

ミヒャエル・ザンデルリンク インタヴュー 新しい器を得て、柔軟性に一段と磨きをかける~ドレスデン・フィルとの進化

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  • 2017.09.21
(C)Nikokaj Lund

新しい器を得て、柔軟性に一段と磨きをかける~ドレスデン・フィルとの進化

 ヤルヴィ家と肩を並べる指揮者ファミリー、ザンデルリンク家の三男坊のミヒャエル。首席指揮者を務めるドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団と3度目の日本ツアーを成功させた今回(2017年7月)、旧東独を代表する俊英チェロ奏者だった時代の面影を振り切り、兄2人(トーマスとシュテファン)も超え、偉大だった父クルトの域に最も到達可能なマエストロとしての資質を強く印象づけた。

 第2次世界大戦の時代、ヒトラーのドイツから旧ソ連へ逃れて戦後、サンクトペテルブルクから旧東独へと還流した一家にとって、ショスタコーヴィチは身近な存在だった。ベートーヴェンの9曲とショスタコーヴィチの15曲、合計24曲の交響曲で、つねに2人の作品を組み合わせてリリースする「24シンフォニーズ」の第2作はベートーヴェンの第3番《英雄》とショスタコーヴィチの第10番の組み合わせ。「作曲された時代それぞれの政治状況、とりわけ指導者への期待と絶望の共通点から発想した。もちろん前者はナポレオン、後者はスターリンだ」と説明する背景に、ザンデルリンク家の20世紀が重なる。

 ベートーヴェンは第1、第2ヴァイオリンを左右に分け、トランペットにナチュラル管、小ぶりのティンパニに硬いバチを組み合わせるなどの古典配置、ショスタコーヴィチはヴァイオリン群を下手側に寄せ、ピストン式トランペット、大きなティンパニを配したストコフスキー式(ザンデルリンクは「アメリカ式」という)と、作品の成立時代ごとに演奏法を変える方針は前作、「6番+6番」から一貫している。「ドレスデン・フィルとの共同作業は6シーズン目を終えたところ。伝統の優れたアンサンブルに柔軟性を加え、作曲家ごとに特別の音響・音像を明確に再現する感性と技量は着実に進化してきた」と自負する。例えば「ベートーヴェンにはレトリック(修辞的)と旋律美。ショスタコーヴィチは鋭く切り立ち、混ざり合わない響き」といった感じのサウンドイメージだ。

 フランチャイズ(本拠地)で録音会場のクルトゥーア・パラスト(文化宮殿)は旧東独時代の1969年に建てられたが、音響の評価は微妙だった。ドレスデン・フィルでは2017年まで4年を費やし、外観を残したまま、ホールの内部をワインヤード型の最新鋭の施設に換骨奪胎する大工事を完成した。「過去を全面否定することなく未来への一歩を踏み出すことができて、非常に幸せな気分だ」と、ザンデルリンクは喜びを隠さない。「24シンフォニーズ」は完成後、ベートーヴェン、ショスタコーヴィチと単純に「2人の作曲家別に分けたボックスでも再発売する計画」という。

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