際涯に、響く音

久々に心震えたフレンチ・プログレの逸品

この半年間、極私的な心持ちのせいでガッツ溢れるメタルになかなか耳が向かないという傾向が顕著な僕でありました。だもんですから我が家に新しく積み上がったCDはその6割方がプログレ方面という有様(残り3割がメタル、1割がその他諸々といった感じです)。で、それ等のプログレCDなんですが、再発モノより新譜の占める枚数が多かったのは自分でもちょっと意外でしたね。何気にここ数年、実はプログレッシヴ・ロックって物凄く充実しているのじゃないかと思ったりもします。そんな中で最近特に白眉な1枚だったのがフランスLAZULIというバンドの『TANT QUE L'HERBE EST GRASSE』です。

エレクトロニクスを駆使したフォーク・ミュージック(?)から出発し、その後徐々にポストロック的なスタイルを呑み込みつつ独特のサウンドをアウトプットするようになった人達です。本作『TANT QUE L'HERBE EST GRASSE』は通算6枚目のアルバムになりますが、古き良きフレンチ・プログレの薫りを漂わせつつ出音の耳触りは相当に新鮮で、バンドとして大きく化けた1枚であると言えましょう。

決して明るくはないものの、絶望的な陰鬱さとは一線を隔す客観性みたいなものが感じられて、そこがきっと僕の好みに合うんですね。

ところで映像の舞台前列、下手側のミュージシャン(CLAUDE LEONETTI)が見慣れない楽器を演奏していますが、これは〈LEODE〉というオリジナル楽器です。交通事故によってギター演奏が困難となったCLAUDE LEONETTIが自作したものだそうです。チャップマンスティックに似たものであろうことは想像に難くありませんが、グリッサンドを多用する奏法が独特で、出音もなんだか不思議な響きがあります。このLAZULIというバンドはCLAUDE LEONETTIが〈LEODE〉の演奏に対する自信を深めるにつれ、そのスケールを加速度的に拡大しているのだと僕は解釈しています。少しく大袈裟に言えば本アルバムはひとつの到達点であり、この先まだまだ楽しみな人達だと思うのです。

こちらはなんだか聴いたことがあるな…と思ってよくよく考えてみると、NOVELA3期の重要作、『Words』(1986)に収録されていた〈傾く陽射しに…〉という曲に少し似た雰囲があるということに気付きました。随分アレな線の繋がり方ではありますが、僕自身は妙に納得しちゃいました。甘くなり過ぎない抒情性ってのが、ね。

この、幾らか醒めた客観性と程よい抒情味が本アルバムの背骨として有効に機能しているので、全体を通して聴いた時の統一感に優れているのも大変良い点でありましょう。近年この手のフランスものと言えばどうしてもNEMOに話題が集中しがちでしたが、本作の充実度をもってLAZULIというバンドへの注目度は俄然急上昇して然るべきかと。

しかしやっぱりフレンチ・プログレってのはフランス語で歌われてこそ、だよなぁ…なんてことを再確認しつつ…あ、1曲FISHが客演して英語で歌っていますけれども。あと、ジャケットのアートワークが妙にメタルっぽいのはどうなんでしょうね。

いずれにせよ今月よっぽど物凄いのが出てくれば別ですが、そうでない限り僕は今年前半を代表するタイトルとして迷わず本作を挙げます。ズバリ、傑作ですよ。

【プロフィール】
ターこう

ターこう

音楽とはあまり関係ない仕事でご飯を食べています。本当は音楽を聴くこと以外なにもしたくないのですが…。守備範囲は主にメタルとプログレ…だと思うのですがそう言い切る自信がありません。邦洋/新旧を問わずその時気になって聴いている音楽について書き散らかします。巷間の認知があまり高くないものが多いかと思います。

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