ようやく、本来あるべき姿をCD時代に取り戻したかのような、この『北京の秋』リマスター版。オーケストレーションされたジャズの名盤の一枚としてその輝きは増すばかりだ。それどころかこれ以上に贅沢かつ斬新なアイデアにあふれた音楽は、未だに聴いたことがない。ジャズのあまりにも有名な歌ものスタンダードを、当時のエレクトロニカとオーケストラを巧みにインストゥルメンテーションし、メロウにセンチメンタルにテナーを歌わせるのだが、そのあまりにもカラフルなサウンドは、なぜかモノクロームの、スタティックな風景を思わせる。この音楽を聴くたびに新しさとは何かと問いかけずにはいられないし、ジャズが今の音楽に聴こえる。