COLUMN

リアム・ギャラガー 『As You Were』 バンドという形にこだわってきた男が、なぜいまソロとして再出発するに至ったのか?

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2017.10.05
リアム・ギャラガー 『As You Were』 バンドという形にこだわってきた男が、なぜいまソロとして再出発するに至ったのか?

見よ、このふてぶてしい面構えを! 過去の栄光を無理に拭うのでもなく、だからといってすがりつくのでもなく、自身の半生を詰め込みながら未来を見据え、リアムがリアムらしい堂々たる姿でソロ・デビューだ!!

ファンの無念を晴らす一枚

 ビーディ・アイが2013年6月に発表した2作目『BE』は、もっと高評価を得ても良かったのでは?――そんな気持ちが個人的には残っている。シンガーとしてのリアム・ギャラガーの素晴らしさはオアシス時代から誰もが認めるところだと思うが、ソングライターとしてのリアムの個性は、それこそ彼のパブリック・イメージとは大きく異なる。60年代のロックンロールを思わせる部分も彼の書いた曲にはしばしば顔を出すが、リアム曲の真骨頂と言えば繊細な柔らかさとたおやかさ、そして優しさ。『BE』ではそんな彼の側面もじっくり堪能できた。しかしリリースの1年4か月後にビーディ・アイは突然の解散。とても残念だった。

LIAM GALLAGHER As You Were Warner Bros./ワーナー(2017)

 それからちょうど3年。ついに完成したリアムのキャリア初となるソロ・アルバム『As You Were』は、ビーディ・アイがファンの心に残した無念を、きちんと昇華してくれる作品に仕上がっている。と同時に、オアシスの解散後に兄以外のメンバー全員とそのまま進んだのがビーディ・アイだったことを考えると、ついにリアムがオアシスを脱皮して次の一歩を踏み出した一枚とも言えよう。ジャケット写真(エディ・スリマンによる撮影だそう)を見た瞬間から、嬉しくなってしまった。ニコリともしていないのが良い。ステージの上で決して笑顔を見せない男が、ようやく第一線に帰ってきたわけだ。

 今年6月にリリースされた先行シングル“Wall Of Glass”では、このキーでいまもダイナミックな曲調を歌えるリアムの喉にも驚いたが、アルバムを通して聴くと、アコースティック・ギターの似合うミディアム・ナンバーの美しさがやはり大きく心に残る。だから、オアシスの初期作品のようなサウンドをゆめゆめ想像するなかれ。むしろ、例えば“Paper Crown”のシンプルでフォーキーなアプローチだとか、“Universal Gleam”のようにオーソドックスなシンガー・ソングライター然とした心地良い曲調とビートルズ風のサイケデリアを合わせた曲の出来が本当に素晴らしい。ドライヴ感のある“I've All I Need”といった楽曲も、できればライヴではエレキ・ギターの強めな音じゃなく、軽やかなムードを活かして演奏してほしいな、とすら思う。

 

何歳になっても人間は成長できる

 この『As You Were』には、さまざまなミュージシャンやプロデューサーが関わっている。まずオアシス時代からのリンクという面で、マーク“スパイク”ステントの名前を挙げておきたい(ほとんどの曲のミックスを彼が担当)。それからプロデューサーとしてグレッグ・カースティン、ダン・グレッチ・マルジェラ、アンドリュー・ワイアットの名がクレジットされている。グレッグ・カースティンはフー・ファイターズやベックの新作にも参加する、近年の大型リリースのサウンド面を担ってきたプロデューサーだ。個人的には〈バード・アンド・ザ・ビーの……〉という枕詞を必ずつけたくなるくらい、女性シンガーとのタッグにより、洗練された生音感と心にスッと入り込むメロディーが融合した佳曲を数多く生み出し続けている人でもある。

 また、ダン・グレッチ・マルジェラはもともとエンジニアやミキサーとして名を成し、ナイジェル・ゴドリッチの下で働いていた時にはレディオヘッドの『Amnesiac』『In Rainbows』にも携わっていて、その後はヴァクシーンズやハーツ、トム・オデールをプロデュース。そして、アンドリュー・ワイアットはA.M.の元メンバーであり(このバンドからはマイケル・タイも“Chinatown”など複数の曲の共作者として名前が記載されている)、現在はソロ活動と並行して、マイク・スノウやブルーノ・マーズらの楽曲への関与でも知られている。

 ほかにも、カサビアンを脱退後にビーディ・アイに大きくコミットしたジェイ・メラーや、ベイビーシャンブルズのベーシストであり、ソロ・ユニットのヘルシンキでも好評を得ているドリュー・マコーネルがゲスト・プレイヤーとして関与。また、スノウ・パトロールやレインディア・セクション、タイアード・ポニーでの活動に加え、ジェイク・バグ“Two Fingers”などのソングライターであるイアイン・アーチャーも、リアムの曲作りをサポートしている。

 オアシス~ビーディ・アイ時代から継続して曲を書いてきただけあって、『As You Were』は初のソロ作にもかかわらず、良い意味でソングライティングがこなれている印象を受けた。その理由には、もちろん錚々たる裏方陣の助力も大きく関係しているのだろうが、リアム本人が年齢を重ね、さらに深みが出たということもありそうだ。それにしても、いまだに彼が椅子にじっと座って歌詞を考えている姿はなかなかイメージしづらい。しかし、“I've All I Need”で描かれる、ひとつの状況に別れを告げるなかで(死を歌っているのか、オアシスや過去の自分との別れを歌っているのか、どちらにも解釈できそう)、それを祝福しながら周囲にも光を届けている様子などは、とても静かな魂から言葉が紡がれているように聴こえる。それこそ、じっと座って作業している様子が浮かぶほど……。何歳になっても人間は成長できる。言い換えれば、何かを志した人間には必ず成長が訪れることをリアムは体現した。オアシスのデビューから23年。ここから始まるリアムの成長も、ずっと見続けていこうじゃないか。

関連盤を紹介。

 

次ページヴォーカリストとして、ソングライターとして、リアムはどのように成長し、そのスキルをソロ作へと繋げていったのか?