ワシントンDCから現れた注目すべき才能の初フル・アルバム。フックアップしたジャイルズ・ピーターソンが〈フランク・オーシャンマッドリブアンドリュー・ヒルとコラボしているかのようだ〉と語るように、歌は憂いを帯び、ビートは揺らぎ、ピアノは自由にリズミックに響く。みずからいくつもの楽器を操って織り成す楽曲はジャズの養分とヒップホップビート・シーンとの同時代性を感じさせ、そこに重ねる伸びやかな歌声はまぎれもなくソウル。そのどれもが本質であるかのような有機的な結びつきが見事だ。多彩なアイデアを30分弱に詰め込んだ小品集の趣ながら、いずれコズミックな大作を生む予感も——それこそ、本作でカヴァーした“Is It Love?”の主であるサンダーキャットフライング・ロータスのように。