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すごくパーソナルなものになった

 「収録曲は時系列に並んでいるわ。1曲目の“Frontline”は恋人から去ることについての曲。“Waitin”でまたその元カレに会って、付き合ってないのに関係が戻ってしまう。“Take Me Apart”でそれがもっとディープになって、“Enough”でそれが完全に終わる。そして5曲目の“Jupiter”で自分一人になるの。これはアルバム中の一つの大きな変化の時ってことよ。自分に向き合って、自分の行動の意味を考え直して、次の“Better”で元カレと友達になるの。〈私たち友達よ〉って言いながら完全に関係が終わりきれてない人たちって多いと思うけど、ここではフェイクの恋人ではなく、本当の友達になる。“LMK”ではシングルになって、またいろいろな人と会いはじめるの。“Truth Or Dare”は真剣な恋愛を始める前の新しい恋のゲーム。“S.O.S.”は夜中に酔って異性にかけちゃう電話(笑)、“Blue Light”は真剣なステップに進みたいけれど、まだそれに対して自信が持てていない状態。11~13曲目でその自信をつけて、また自分を受け止めてくれる人がいるんだと思えるようになるの。そして最後の“Altadena”は、まだ自信が持てていない皆を励ます曲。外側からではなく、内側から強くなろうとする皆を応援する曲よ」。

 そんな発言やクレジットから想像する限り、以前からアルバム用にキープされていたのは「作っているうちにすごくパーソナルなものになっていった」タイプの曲のようで、恐らくはそれらを違和感なく一つの流れで成立させるべく楽曲が追加されていったのだろうか。先述のEPに続いてアルカがプロデュースした3曲のうち、アトモスフェリックな“Enough”や躍動的なハイパーバラード“Onanon”は作品全体を駆動する重要なキーになっているし、レーベル側の提案で計3曲を共作したXXのロミーなど、ワープ移籍後のコネクションも新鮮な成果をもたらしている。

 「私がどう表現していいかわからないことを彼女が言葉にしてくれたの。〈こういうことを言いたいんじゃない?〉とか〈こうやって表現すれば?〉とか。私はメロディーを作って、彼女がポエムを書いて、それを繋ぎ合わせて曲にしていった。私から出てくるものと彼女の側から出てくるものは良い意味で違うから、すごく刺激になったし、素晴らしい作品を作ることができたわ」。

 多くの曲にソングライターとして関わるモッキーのほか、ブーツやテラー・デンジャー、サビナといった才能もさまざまな局面で名を列ね、重厚にして端正な内容に仕上がった『Take Me Apart』。96年~2005年頃のプログレッシヴなメインストリームR&Bの意匠が現行ポップ・シーンの肥沃な源泉となっている現在、ケレラの音楽性は二重の意味で王道のR&Bとなった。そんな言葉遊びはともかく、冒頭に挙げた彼女の狙いは確実に達成されている。

『Take Me Apart』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

 

ケレラの客演作を一部紹介。