昨年にヴァンパイア・ウィークエンドを脱退し、フランク・オーシャンやソランジュの作品に裏方として参加したり、ウォークメンのハミルトン・リーサウザーと共演盤を発表したりしていたロスタム・バトマングリ。彼の初ソロ作は、バンド時代をよく知る人もそうじゃない人も感動を覚えるであろう傑作だ。ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』を想起させる重層的な音と声で聴き手をドリーミーな世界へ誘う“Sumer”に始まり、ボン・イヴェールのように神秘的なヴォーカルで包み込む表題曲、アラビックな旋律に幻惑されるサイケ色の“Wood”、ブラジル的なパーカッションと浮遊感のある旋律が不思議と合わさった“Don’t Let It”、フランク・オーシャンに呼応するような“Hold You”(エンジェル・デラドゥーリアンが客演)……と、景色を変化させつつ広がっていく音世界はさながら万華鏡の如し。〈夜明けと黄昏に惹かれる〉と本人は言っているが、なるほどその時間帯に聴くのが最高に相応しい。