INTERVIEW

Ryohu 『Blur』 KANDYTOWNきっての多才な男が、メロウな歌心とグルーヴに満ちた初の全国流通盤で描き出した新しい景色とは?

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  • 2017.10.11
Ryohu 『Blur』 KANDYTOWNきっての多才な男が、メロウな歌心とグルーヴに満ちた初の全国流通盤で描き出した新しい景色とは?

 「そこまで考えなくなったというか、自問自答してたらいつまでも作品を出せない感じだったんで。去年いろんな人に手伝ってもらって『All in One EP』を出して、リリパとかも開いて思ったのが、〈あ、10代の時に何かリリースしとけば良かったな〉みたいな(笑)。そこに気付くまで長かったけど、まあ、楽しくやってきました」。

 昨年メジャー・デビューしたKANDYTOWNの母体とも言えるBANKROLLを友人たちと結成し、ズットズレテルズで脚光を浴びた10代の頃からラッパー/ビートメイカーとして多彩な動きを見せているRyohu。クルーが名を上げる以前からBase Ball Bearやペトロールズ、Suchmosらとのコラボでも名を馳せてきた彼は、近年はAun beatzでのバンド活動も並行するオールラウンド・プレイヤーだ。いま改めて紹介するには遅すぎるかもしれないそんな多才な男が、ここにきて初の全国流通盤となるEP『Blur』を完成させた。

Ryohu Blur Less+ Project.(2017)

 「10代の頃からいろんな話はあったし、周りに刺激は受けてたけど、当時は何をしたいのか自分でイマイチわかってなくて。いまほど音楽も知らなかったし、人として経験値もなかったし、〈絶対に通じねえな〉って思ってたのかもしれないですね。ずっと模索してたというか」。

 早くから多くを見てきたために生じた躊躇や気負い――そのようなものが取り払われたのは、冒頭の発言にもある『All in One EP』(2016年)を作り上げた頃だという。

 「KANDYTOWNが認知されるようになってきたからこそ、そのなかで改めて自分が見えてきて、〈あ、こういうの俺やりたいかも〉みたいな芽生えがハッキリしたというか。KANDYにメジャーの話があったり、IOのソロが出るとか、Suchmosとか同い年ぐらいの近い奴らが上がってきて。一方ではYUSHIが死んだり、周りの状況がめまぐるしく変わるなかで、その時の自分の感情を出したのが『All in One EP』でしたね」。

 生音主体の芳醇なメロウネスに雰囲気のあるラップを聴かせた同作の手応えを受け、今年はライヴ盤『Just a Second』(前年末のワンマンの模様を収めたもの)やAun beatzのEPなどリリースが続いている。そのいい流れの延長線上で生まれたのが今回の『Blur』というわけだ。

 「単純に同じ曲をやってるとライヴで飽きちゃうんで(笑)、漠然と年内にもう一枚出したいなと思ってて。あと、『Just a Second』はあくまでも去年の自分を振り返るもので、〈2017年の私はこんな感じですよ〉っていう盤を作りたかった。今回は自分の思いっていうよりもプロデューサー目線で、〈こういうトラックでRyohuがラップしてみたらおもしろいんじゃない?〉って自分に投げかける感じで作りました。RyohuがRyohuをプロデュースするみたいな。今回は純粋なラップはそこまでガッツリやってなくて、いまのうちに歌モノっぽいのもやっといたほうがいいと思って挑戦して。全体的に挑戦してますね、今回は」。

 そんな試みを支えたのが共同プロデュースを担ったampelの河原太朗だ。彼と膝を突き合わせて「俺がサンプリングしたり、その場でリズムを組んで、太朗ちゃんにイメージを伝えながら演奏してもらってワンループを一緒に作っていって。2人で曲作りした感じですけど、俺がああじゃないこうじゃない?と言うのに対して、最終的に大変なのは太朗ちゃんで(笑)」という行程から生まれた楽曲を、Aun beatzのSuyama Jackson(ドラムス)とMarkun(ギター)、SANABAGUN.の谷本大河(サックス/フルート)と高橋紘一(トランペット)、そしてコーラスのAAAMYYYといった身近な顔ぶれが美しく磨き上げている。

 陽光が射し込むような“The More, The Better”で始まる連なりは、「EPのタイトルにしたけど表現してなかった」スピリチュアルな感覚をレイドバックして届ける“All in One”、ファンキーなアーバン・グルーヴの“Shapeless”へ軽快に歩を進め、「リアルを反映するというより、架空の景色を想像して書いた」という言葉の詩情がメロウな艶を帯びながら時の経過を描いていく。甘くジャジーな展開からドープなトラップへ沈み込む“Desserts”で闇に包まれる中盤以降は、70年代ソウル風な生音オンリーの“Feelings(White Bird)”、ポエトリー調の語りでハウスに乗る“Shake”で揺さぶり、心地良くも哀感を湛えた結びの“Say My Name”へ。昼と夜/夜と朝の曖昧な変わり目を描いたジャケさながらの音像は、表題の持つ意味にも繋がってくる。

 「真っ暗でもないし明るくもない、良いことも悪いこともある、その気持ちを大事にしようと思っていて。ヒップホップだし、バンドでもやってるし、若くても年を取ってもいいし、どっちもあるからこそ全部を受け入れる……自分の態度を表したというか、自分の人生は〈Blur〉でありたい、みたいな」。

 そうして振り幅の広い曲調をコンセプチュアルで美しい一枚に束ねた『Blur』は、結果的に、来るべきフル・アルバムへの習作にして予告編にもなったと言えそうだ。

 「作ってる途中からそうなってきましたね。今回はアルバムほど荷が重くなかったし(笑)、確かめたかったことをいろいろ試せて、〈じゃあ、来年のRyohuはどうなってるのか?〉って」。

 そんな自問自答のクリエイションが新たな実を結ぶ日はそう遠くないだろう。

 


Ryohu
東京出身のラッパー/ビートメイカー。中学生の頃にラップを始め、2005年にYUSHI、IO、BSCらとBANKROLLを結成する。2008年よりズットズレテルズに参加。2011年にソロでのデモ音源集『1DOZEN』を発表し、KANDYTOWNの活動も並行する傍ら、2013年にファースト・アルバム『GREEN ROOM』をリリース。それに前後してBase Ball Bear、Earth No Mad、ペトロールズ、Suchmosらの作品に客演して名を広めていく。2016年に『All in One EP』を発表し、KANDYTOWNではメジャー・デビュー。今年に入ってからはライヴ盤『Just a Second』とAun beatzでの『Summertime EP』を発表し、10月11日に初の全国流通盤となるEP『Blur』(Less+ Project.)をリリースする。

 


EVENT INFORMATION

Ryohu “Blur” Release Party
12/8 (金) @ Shibuya WWW
OPEN 18:30 / START 19:30
出演者:Ryohu (Band Set) and more
http://www.ryohu.com/live/