クリスチャン・スコットのバンド・メンバーを務めるサックス奏者/シンガーで、ブッチャー・ブラウンとのコラボでも知られる注目の才能による初のフル・アルバム。ジャズとR&B、サックスとヴォーカルの狭間を揺れ動く……という触れ込みの通り、それらがシームレスに溶け合う感覚にはとろけそうになる。先行公開済みの表題曲や“I Can't”をはじめ、丸みと甘みを帯びた歌唱は専業シンガーに引けを取らないもので、同様の魅力を放つサックスと共に一曲中で二通りに〈歌う〉様は濃密そのもの。Pファンクの匂いを漂わせる中盤のインタールードや、柔和なフォーキー・ソウル“Never Thought”など幅広いブラックネスも披露しており、リスナーによってはフュージョンやスムース・ジャズ、コートニー・パインあたりを思い出す人もいるかも。いずれにせよ、ジュリアード音楽院の同窓生らの力も借りながら、歌と演奏のすべてにおいてしっかりメロディーを構築している点も素晴らしい。全編を通じて人懐っこい歌心に溢れた傑作だ。