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アーブル美術館プレゼンツ〈クラシック音楽の或る棚〉名曲シリーズ クラシックの名曲と名画の模写による〈聴いて・見て・飾る〉コラボ!

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  • 2017.10.19
アーブル美術館プレゼンツ〈クラシック音楽の或る棚〉名曲シリーズ クラシックの名曲と名画の模写による〈聴いて・見て・飾る〉コラボ!

クラシックの名曲と、名画の模写によるコラボレーション! 聴いて・見て・飾る、名作シリーズ

 かつての日本には、ごく一般的な家庭にも分厚い文学全集や美術全集、LPレコードのクラシック名曲全集が置いてある時代があった。親たちにとってはリビングや書斎に飾ってあるだけのインテリアに過ぎなくても、そこから読書や音楽の体験を広げていった子どもたちは多いのではないだろうか。私も子ども時代、家にあった文学全集でギリシャ神話や日本の近代私小説の世界を知ったが、音楽家にインタヴューしても「はじめての音楽との出会いは、幼少時に家の棚に置いてあったクラシックのレコードだった」と語る人は多い。

 今でこそ、場所をとる「全集もの」は流行らず、好きなときに好きなものだけを取り出して楽しめるクラウド時代だが、果たして「自分の興味あるもの」だけに触れていて、センスや視野は広がるのだろうか。予期せぬもの、自分の引き出しにはないものとの出会いを提供してくれる「棚」の大切さが、今あらためて見直されるべきだろうと思う。

 そんなことを考えていた折、“「アーブル美術館」プレゼンツ「クラシック音楽の或る棚」名曲シリーズ”と名づけられた25枚のCDが発売されることを知った。ジャケットに古今東西の名画をあしらい、クラシックの名曲名演を収録したCDシリーズ……かと思いきや!? よく見ると、なにかが違う。ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が、フェルメールの《真珠の首飾りの少女》が、ゴッホの《包帯をしてパイプをくわえた自画像》が、なんともいえず脱力系な、味わい深い表情をしているではないか。

 そう、これらの名画はすべて〈アーブル美術館〉という親子3人のアートユニットによって描かれた「贋作」なのである。ルーブル美術館に憧れるあまり、自身の名前にちなんでアーブル美術館と称するユニットを結成した母親の藤原晶子さん。館長である彼女の手ほどきのもと、息子の天馬君(2004年生まれ)と娘の心海ちゃん(2005年生まれ)は幼い頃からアートに取り組み、あらゆる名画を模写し続けてきた。現在、活動6年目にして総作品数は800点。2015年にはパルコミュージアムで『大々贋作展』を開催したほか、メディアでも大きく取り上げられて話題を呼んでいる。

 このようにユニークな名画と、クラシック名曲のカップリングの妙も、このシリーズの楽しいところ。何枚かピックアップしてみよう。

 『マーラー: 交響曲第5番』のジャケットに使われているのは、クリムトの《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I(黄金のアデーレ)》。マーラーとクリムト、同時代のウィーンに生きたふたりの芸術家は、アルマ・シントラーというミューズの存在を通してつながっている。オリジナルと同じ138cm角サイズで、本物の金箔をふんだんに使って描かれたアーブル美術館による贋作は、そんな世紀末の華麗なるウィーンの雰囲気を纏いながらも、どこかオリエンタルなアデーレの表情が印象的だ。

 『ビゼー:「カルメン」組曲 &「アルルの女」組曲』のジャケットには、ゴッホの《ひまわり》。ゴッホは南仏のアルル滞在中に《ひまわり》の連作に取り組んでおり、降り注ぐ太陽のような明るい色彩感を、アーブル美術館の贋作も見事に捉えている。『グリーグ: ペール・ギュント(抜粋)』にはムンクの《叫び》が使われているが、ふたりはともにノルウェーを代表する芸術家。この贋作には、子どもたちが《叫び》を見て感じた恐怖が何倍にも増幅して描かれているようだ。

 往年の名盤には西洋絵画がジャケットにあしらわれているレコードが数多くあったが、『ベートーヴェン&ショパン「英雄」』にダヴィットの《サンベルナール峠を越えるナポレオン》、『チャイコフスキー: 3大バレエ・ハイライト』にドガの《エトワール》といった組み合わせは、かつての「名画ジャケ」を彷彿とさせるものだろう。一方で、『ホルスト: 組曲「惑星」』に俵屋宗達の《風神雷神図屏風》という、東西の垣根を超えたカップリングも斬新だ(贋作では、節分の鬼にしか見えない風神の表情が秀逸!)。

 音楽面のラインナップにおいても、ただ名曲を並べるだけでなく、『バッハ名曲集』『ヴァイオリン名曲集~ベスト・オブ・メニューイン』といったテーマごとにまとめられたタイトルもあり、クラシック初心者にも親しみやすい。EMI、TELDEC、ERATOなどの音源を所有するワーナークラシックスからリリースされるだけに、演奏者の顔ぶれは超一流。さらに高野麻衣氏による書き下ろしの解説は、名曲の背景にあるストーリーやドラマを分かりやすく紐解くと同時に、その曲が使われた映画やドラマ、漫画なども紹介されており、紋切型の解説とはひと味違って新鮮な気持ちで読むことができる。

 「子どもの無限大の感性を感じてほしい」という藤原さんの思いが込められたアーブル美術館の愛すべき贋作たちは、オリジナルの名画にある“本当の凄さ”を子どもたちが肌で感じ取り、キャンバスに落とし込んだもの。音楽や美術に触れる体験を通して、本質を捉えるセンスを育てる「棚」を、あなたの家にも作ってみてはいかがだろうか。

 

シリーズ全25枚はこちら! ユニークな名画とクラシックの名曲によるカップリングの妙をご堪能あれ