INTERVIEW

〈フェスティバル/トーキョー17〉対談 チェン・ティエンジュオ×ヴィヴィアン佐藤 ――異形の舞台を現出させる、中国ミレニアル世代を代表するアーティスト

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  • 2017.10.20
photo by Naoki Hashimoto

異形の舞台を現出させる、中国ミレニアル世代を代表するアーティスト

 怪異な魑魅魍魎(ちみもうりょう)、派手な色彩のコスチュームを纏った異形の、或いは裸形のキャラクターたちが蠢くチェン・ティエンジュオの映像を見たら、その画面から目を背けたくなると同時に、目を離すことができなくなるに違いない。もしこれを生のステージで見たらどんなだろう……? それが今年の「フェスティバル/トーキョー」で実現してしまう。見たい。見たくない。いや正直に言おう。私は、そしてあなたは、やっぱり見たいのだ。

 チェン・ティエンジュオは1985年、北京生まれ。イギリスでアートを学んだ後、北京、ヨーロッパを中心に広く舞台作品を発表する、「中国ミレニアル世代」を代表する注目のアーティストだ。11月に開催される公演に先立ち、リサーチと記者会見を機に来日したチェン・ティエンジュオと、日本を代表するドラァグ・クィーンであり、ダンスや映画評論などでも活躍するヴィヴィアン佐藤氏に対談をお願いした。

 

ヴィヴィアン佐藤(以下V):中国のアート・シーンは今とても面白そうですね。日本では1964年のオリンピック開催の後、65年、66年あたりが、ちょうど祭りの後の真空状態のようになって、もっと混沌としたもの、たとえば暗黒舞踏とか、美術ではハイ・レッド・センターのようなジャンル横断的な活動が起りました。今の中国にも、そんな活気を感じます。

チェン(以下C):確かにそうかもしれません。中国でも2008年の北京オリンピックの後、アート・マーケットの冷え込みがあり、古い世代のアーティストが姿を消し、若手の台頭が起こりました。特に2010年からの3年間の動きは、若手が活躍したという意味でとても重要だと思います。地域としても2013年以降、中国のアートと音楽の中心は北京から上海に移行しました。
 僕らの世代は、上の世代とは大きな違いがあります。もうアート雑誌で情報を得るというようなこともありません。インスタグラムやフェイスブックで多くの情報を得ていて、情報に隔たりがない“インターネット世代”なんです。逆にいえば、東京でアングラと呼ばれるものも、世界から見れば、もはやアンダーグラウンドとはいえなかったりもするのです。
 よく「中国のアート」について質問を受けますが、われわれの世代は、上の世代とはまったく違う活動をしていると思います。私達の世代のアーティストの関心は、今や政治ではないように思います。さらに言えば、中国で「アート」の領域で仕事をしている人たちは、音楽や他の周辺領域のものを見ようとしないので、つまらないですね。

Vまあ、日本だってそんなもんですよ。(笑)アートと非アートというような境界を引こうとするから、つまらなくなるんですね。
 私は、この先当分の間、地球上に中国以上の大きな国は、もう生まれないだろうと思うんです。まあ、大きな世界戦争が起きないとして、ですけど。そして、あなたのようなアーティストも、やはり中国以外の国からは生まれないのではないでしょうか。脈々と続く伝統や形式がありながら、同時にグローバルなリアルタイム性もある。なんか“最終形態”っていう感じがします。

――今回の作品「忉利天(とうりてん)」は、新作ですか?

Cええ、新作です。ただ、これまでのどの作品もそうですが、過去の作品と関係する部分や、以前にも登場したイメージが出現することはあります。

――作品に対しては、「構成・演出・美術」という立場になるわけですが、例えば舞台美術、衣装や照明を担当するアーティストに、自身の求めるイメージはどのようにして伝えるのでしょう?

Vデッサンやエスキースのようなものがあるんでしょうか?

Cデッサンで伝えます。大学時代は、絵を描いていて画家になろうと思っていたんです。ただし、そうして伝えてみても、中国では(日本やドイツの場合とは違って)思っていた以上のものが出来てくるということはなくて、‥‥まあ、ひどいものが出来てくるんですがね。(笑)

――出演するパフォーマーやダンサーは、オーディションで選ぶのでしょうか?

Cいえ、オーディションでダンサーを選ぶということはなくて、知り合いの中から選ぶんです。プロフェッショナルのダンサーは、作品に求められる以上に完璧さを求めてしまいがちです。そもそも私自身、なにかの分野のプロフェッショナルではありません。参加してもらうアーティストとは、だいたいSNSとかで繋がりますね。SNSの方がむしろ直接顔を合わせるよりも、その人のいろいろな面を知ることができるということもあります。アーティストなら作品の映像、音楽家ならその人の以前の作品を聴くことだってできますし。なんといっても私のまわりには面白い人が多いんです。それも世界各地に! ウィーンの公演では、日本人アーティストにも参加してもらいました。
 日本人は、実にいろいろな面を持っていますね。知的で礼儀正しい面もあるいっぽうでクレイジーな面もある。

――ええ。ヴィヴィアンさんなんて、まさにその典型かもしれません。(笑) 昨日の記者会見でヴィヴィアンさんが最前列で熱心に聞いていらっしゃったことに気付かれましたか?

Cえー、ぜんぜん!

Vそうそう、なにしろ多面性がありますからね。(笑)

――ご自身ではチベット仏教の信者だとコメントしていらっしゃいますが、チベット仏教の僧侶のストイックな生活と、ヒップホップとかクラブ・カルチャーの間には、かなり隔たりを感じますが‥‥。

C大学時代に仏教に興味を持つと同時に、ヒップホップやカワイイものにも興味を持ったんです。きゃりーぱみゅぱみゅとかね。たしかに宗教とポップ・カルチャーの間には、衝突もあると思います。でも、むしろそうした衝突のエネルギーを通じて新しいものが生まれることのほうに興味があるんです。

――以前の作品のタイトル「MAZDA」はゾロアスター教の神様でしたが、今回のタイトル「忉利天」も仏教用語からきているようですね。

C中国では「三十三天」ともいって、33の天界があるという考えです。

Vちょっと、ダンテの『神曲』みたいな感じなのかな。地獄篇、煉獄篇、天国篇とあって(各篇は33部から成る)。 べつに勉強して行かなくてもだいじょうぶですよね?

Cもちろん。予習とかは必要ありませんよ! でも日本の人は仏教に馴染んでいるので、もしかしたらヨーロッパの人より、伝わりやすい部分はあるかもしれません。

――これまでのベルリン、ウィーンや北京での公演と、今回の日本の公演は何か違いを感じていますか?

C実は日本での公演については、観客の反応がうまく想像できないんです。ドイツをはじめヨーロッパでは多くの公演や展示をやってきましたし、中国は自分の国でもあるので、或る程度お客さんの反応を予想できますが、日本はほんとに初めてで、予想がつかないというのが正直なところです。ウィーンの公演では、生肉を投げつけたりする場面とかあって、かの地でも賛否両論を引き起こしました。さすがに日本でそれをやる勇気はないですけど。(笑)とにかく、いろいろなものを出していって、日本の観客の反応を見てみたいですね。静かに座って観るというのではなく、もっとエモーショナルな反応、それも、いろいろな世代の人たちからのね。

 


チェン・ティエンジュオ(陈 天灼)
1985年北京生まれ。2009年セントラル・セント・マーチンズを卒業。10年チェルシー・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。現在は北京を拠点に、ダンサーやミュージシャン、フランスのアートグループなどとのジャンルを超えた協働作業を続ける。17年にはウィーン芸術週間やドイツの世界演劇祭へも招聘されているなど、世界的なアーティストとして注目されている。

 


ヴィヴィアン佐藤(vivienne sato)
非建築家、美術家、ドラァグクイーン、誤読の女王。東京や映画をあらゆる角度で読み解こうとするアーティスト。最近のモットーは垂直に旅する。都市も芸術もそれを計画し製作した者の所有物ではなく、旅行者や鑑賞者も同等に責任を負わねばならない。

 


LIVE INFORMATION

演劇×ダンス×美術×音楽…に出会う国際舞台芸術祭 フェスティバル/トーキョー17
開催中~11/12(日)
会場:東京芸術劇場、あうるすぽっと、南池袋公園、PARADISE AIRほか

アジアシリーズ vol.4 中国特集
チャイナ・ニューパワー─中国ミレニアル世代─『忉利天(とうりてん)』

○11/10 (金)19:00開演★ 11/11 (土) 19:30開演
★=終演後、ポストパフォーマンストークあり。
受付開始は開演1時間前、開場は30分前
※演出の都合上、(光や音を含む)刺激の強い描写がございます。
構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ
キャスト:ユー・ハン(喻 晗)、ベイオウ(北欧)、ほか
音楽:アイシャ・デヴィ
会場:あうるすぽっと(東京・池袋)
www.festival-tokyo.jp/

Photo: Qianarrchy
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