ESSENTIALS
自身のアルバムから主要なプロデュース作品までウィリー・ハッチのいい仕事
RCAからの初期2作を収めた2in1。共にジョン・フロレスの制作で、69年のデビュー作『Soul Portrait』はドン・デイヴィス作の1曲を除いてすべて本人の自作。ミディアムとアップを中心に、憧れのオーティス・レディングにも通じる熱く逞しいヴォーカルを聴かせる。バラードを中心とした70年作『Season For Love』はジョニー・マティスやグレン・キャンベル、サム・クックなどの名曲をカヴァーし、ポップな側面を伝えた。 ＊林
ハル・デイヴィスらと共作した“I'll Be There”（70年）で認められて以降、未発表モノも含めてJ5にいくつか楽曲提供し、マイケルのソロ作にも貢献しているハッチだが、本作に収録の“I Can Only Give You Love”ではプロデュースまで任されている。コーポレーションを踏襲したファンキーなバブルガム感を意識しつつ、美しいメロディーとコーラスに印象を残す佳曲だ。 ＊出嶌
レイ・チャールズのレイレッツから派生した女性グループが72年にモーウェストから発売する予定だったお蔵入りアルバム＋α。ただ、ハッチの手掛けた“Mr.Fix-It Man”と“You've Got To Make The Choice”は当時シングルでリリース済みで、両者のファンキーなスタイルが良い相性を示した結果だろう。＋αの既発曲でもハッチは抜群のポップセンスを見せる。 ＊林
モータウン移籍第1弾にしてハッチの出世作となった一枚。ピンプを主人公としたブラック・ムーヴィーの劇伴で、パーカッシヴな疾走チューン“Slick”や雄大なバラード“I Choose You”など路上感と哀愁を生々しく描写。なかでも“Brother's Gonna Work It Out”はアルバム全体のムードを集約したドラマティックな名曲だ。西海岸の腕利きが演奏をサポート。 ＊林
ミラクルズを脱退したスモーキーのソロ第1弾に共同プロデューサー／アレンジャーとして関与。謝辞欄に〈素晴らしい才能〉とあるハッチの洒脱かつ太いグルーヴは全編で発揮されているが、フィフス・ディメンションも歌った“Never My Love”とジャクソン5“Never Can Say Goodbye”のメドレーでは選曲も含めてハッチのポップセンスを改めて刻印した。 ＊林
マーヴィン・ゲイも参照したかもしれない“I Wanna Be Where You Are”の好解釈で始まる意欲作。全体的にアレンジ手腕と歌い手としての魅力が高打点で融合した印象で“California My Way”“I'll Be There”のセルフ・カヴァー、後にミラクルズやJ5も歌う“Can't Get Ready For Losing You”も光る。白眉はもちろん黒い緊迫感が迸る“Tell Me Why Has Our Love Turned Cold”。 ＊出嶌
パム・グリア主演映画のサントラで、ハッチにとってのもう一つの代表作。『Shaft』『Superfly』などの先達を大いに参照したことはフルートの躍る導入の“Chase”からも明白だし、曲名通りカーティス風メロウな“Give Me Some Of That Good Old Love”も。曲の用途を思えばそれも当然で、良い意味で〈それっぽさ〉の演出が巧かったハッチの器用さを物語る一枚とも言える。 ＊出嶌
元スピナーズのリードによるモーウェスト録音曲も含むソロ・デビュー作。ハッチは4曲をプロデュース、うち3曲が彼のペンとなるが、特に作者のハッチやマーヴィン・ゲイが歌うもお蔵入りとなった“I'm Gonna Give You Respect”はGCの逞しいヴォーカルとハッチ流の勇ましいサウンドが見事に合致した快演だ。GC自作のスロウ“Tippin'”も好サポート。 ＊林
