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91年に2つのシングルをリリースして以来、ほぼ活動休止状態に入ったスクリッティは、99年、ついにサード・アルバム『Anomie & Bonhomie』を発表。モス・デフ(ヤシーン・ベイ)ほか3人の新鋭ラッパーを招き、90年代のヒップホップ・サウンドにバンド(ベースはミシェル・ンデゲオチェロ)で挑戦した意欲作となった。

99年作『Anomie & Bonhomie』収録曲“Tinseltown To The Boogiedown

スクリッティが再び活動をはじめるのは2006年、4作目にして現在のところの最新作である『White Bread, Black Beer』のリリースがきっかけとなった(同作はラフ・トレードへの20年ぶりのカムバック作にもなっている)。東ロンドンのダルストンにある自宅でグリーン自身がすべての楽器を演奏して録音したこの作品は、簡素かつミニマルで、高額の予算によって制作された『Cupid』と好対照をなしている。ビートルズ風のメロディーやベッドルーム・ポップ的なサウンドは初期のエリオット・スミスの音楽を想起させ、また一方でチープなドラムマシンやドリーミーなシンセ・サウンドはチルウェイヴの先駆として聴くこともできる。ラップ・ミュージックと現代ジャズのシーンを橋渡しした『Anomie & Bonhomie』とともに、スクリッティ・ポリッティの近作は、2017年の今こそ新しいパースペクティヴから再評価できるかもしれない。

2006年作『White Bread, Black Beer』収録曲“The Boom Boom Bap

トレイシー・ソーンやマニック・ストリート・プリーチャーズの作品への参加といったトピックもありつつ、近年はバンドを従えたライヴ活動を活発化させ、新しい局面を見せているスクリッティ・ポリッティ。エヴァーグリーンな『Cupid』を中心に、DIY時代の楽曲から最新作までキャリアを横断する選曲には、ポストパンクに熱狂した同時代のファンも、スクリッティを伝説として知った新しいファンもきっと満足できるはず。また、ここ最近のライヴ映像をいくつか観て驚いたことに、グリーンの歌声はまったく衰えを見せていない。あの『Cupid』の頃の、そのままである。40年近い音楽活動を経てもなお現役であるグリーン・ガートサイドの歌をライヴで聴ける――想像しただけで鳥肌が立つ。スクリッティ・ポリッティの輝きを失わない楽曲群をBillboard Live TOKYOの最高の音響空間でぜひとも堪能したい。

参考文献:「ポストパンク・ジェネレーション1978-1984」 サイモン・レイノルズ著、野中モモ訳、2010年、シンコーミュージック・エンタテイメント刊

 


LIVE INFORMATION
スクリッティ・ポリッティ

2017年11月4日(土)、5日(日)Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場15:30/開演16:30
2ndステージ:開場18:30/開演19:30
サービスエリア 9,400円/カジュアルエリア 7,900円
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