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delofamilia
靄がかかったような音世界の向こう側に覗く、素に近いNAOTOの表情

 NAOTOのソロ・プロジェクトとして2007年に始動したdelofamilia。同年に発表された初作『quiet life』には信近エリ、車谷浩司(AIR)がヴォーカリストとして参加したが、セカンド・アルバム『eddy』(2009年)にシンガー・ソングライターのRie fuを招いたことをきっかけに、delofamilliaはNAOTOとRie fuの2人体制に移行。その後も『Spaces in Queue』(2011年)、『archeologic』(2013年)、『Carry on Your Youth』(2014年)とリリースを重ね、シューゲイザー/エレクトロニカ~チルウェイヴを基調とする音楽性を追求してきた2人は、約3年半ぶりの新作『filament/fuse』によって、このユニットの芯の部分をさらに明確にしている。

delofamilia filament/fuse SUPER((ECHO))-LABEL/スピードスター(2017)

 「delofailiaに関しては、いい意味でやりたいことが決まっていて、新しく挑戦したいこともないんです。サウンドは淡々としていて、抽象的。歌詞にメッセージがあるわけでも大げさなメロディーがあるわけでもなくて、全体的に靄がかかっているような感じですよね。特にRie fuが参加してからは、楽曲の質感が変わってないんです。特に意識しているわけではなくて、自然に作っていたらこういう曲ばかり出来るんですよ。そういう意味では自分の素の部分に近いかもしれないです」(NAOTO:以下同)。

 荘厳なオルガンの響きとホーリーな旋律、ノイズの粒子を散りばめた電子トラックが混ざり合う“race”、オーガニックな手触りのサウンドメイクのなかでヨーロッパのフォークロアを想起させるヴォーカルが広がる“peace”など、全10曲が収録された本作。「Rie fuはイギリスを拠点にしているので、データをやり取りしながら作ってます。今回のアルバムの制作ではほとんど会ってないですね(笑)」という遠距離スタイルながら、両者のコラボレーションは確実に深化しているようだ。さらに特筆すべきはPeople In The Boxの波多野裕文を迎えた“Enter The Mirror”。緻密に構築されたリズムとハーモニー、生々しいギターの音色と波多野のポエトリー・リーディングが融合したこの曲は、今回のアルバムの軸のひとつであると言っていいだろう。

 「以前からPeople In The Boxのファンなんですよ、僕は。前にdelofamiliaとツーマン・ライヴをやったことがあるんですが、今回のアルバムでは、ぜひ波多野さんと一緒に曲を作りたいと思って。最初は歌と歌詞だけの予定だったんですけど、リズムのアレンジやギターの質感などについても意見をもらいました。すごく良い曲になったし、がっつりコラボレーションできて嬉しかったですね」。 *森 朋之

delofamiliaの近作。

 

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