今年の〈フジロック〉の〈ROOKIE A GO-GO〉にも出演し、注目が高まる京都在住の7人組、バレーボウイズがファースト・アルバム『バレーボウイズ』を完成させた。3人のギタリストと4人のメイン・ヴォーカリストを擁し、コーラスは全員で行うという独特のメンバー編成が印象的な彼らだが、その経緯をネギ(ギター&ヴォーカル:以下同)に訊ねてみると……。

 「僕が初めて〈音楽を一生懸命に演奏する人ってカッコイイなぁ〉と思ったのが学校の合唱コンクールのときなんですけど、このバンドでもそういうことをやりたくて。合唱コンクールってすごく青臭いものだけど、だからこそグッとくるパワーを感じる。あれだけ多くの個性がぶつかり合いながらも、それが〈1曲〉として飛んでくる破壊力というか。あと、フジロッ久(仮)や星のクズさまたち(≒星の王子さまたち)のような大人数のバンドに憧れを持っていたということもあります」。

 そんな彼らがコンセプトとして掲げているのは、〈昭和歌謡とアイドルサウンズの融合〉。その〈懐かしいサウンド〉の源流はどこにあるのだろう。

 「曲を作るときに考えるのは、父の青春時代のこと。また、母の聴いていた音楽がそのまま出ている部分もあるかもしれません。それから、メンバーに〈内に秘めたアイドル性〉を感じているところもあって、バンドのコンセプトはそこに自分の作曲スタイルを重ね合わせた末に浮かんだものだと思います。影響を受けたアーティストというとCHAGE and ASKA、来生たかお、嵐、尾崎豊、浜田省吾、石井竜也あたりですが、ただ、それよりも自分の身の回りや実際にライヴで観たバンドからの刺激が何よりも色濃いです。懐かしいサウンドかはわかりませんが、先ほどのフジロッ久(仮)と星の王子さまたちに加えてロック大臣ズ、おとぎ話、ボーイズヤング、ネジ梅タッシと思い出ナンセンス、この6組がいちばん影響を受けたバンドたちです」。

バレーボウイズ バレーボウイズ OCTAVE(2017)

 そうして制作された初アルバム。その手応えについての言葉も、懐かしさが溢れる楽曲と同様、驚くほどピュアで愛おしい。

 「宅録の経験しかなかった僕にとって、今回やってみたかったのは〈スタジオでレコーディングすること〉そのもので。エンジニアやアドヴァイザーの方々の僕らの音楽に対する思いが熱くて、“七月の嘘”では〈ウッ! ハッ!〉というコーラスのアイデアをもらったり、最高でしかなかったです!」。

 その“七月の嘘”は、ローファイな音の質感も絶妙なナンバー。ほかにも、“アイドル”ではノスタルジックな歌謡ポップに身を委ねながら手拍子を入れたくなったり、“マツリ”ではラフにまとめた心地良いサウンドに乗って、沖縄のエイサーでお馴染みの〈イーヤーサーサー♪〉というフレーズが楽しく聴こえてきたり。

 「曲を作るときは、まず最初に、曲にしたい情景を思い浮かべるんです。そうすると、ランダムに言葉やメロディーが付いてくる。“マツリ”の〈イーヤーサーサー♪〉は〈ヴォーカルふたりの掛け声といえばこれだ!〉みたいに選んだかな。あと、僕が作った曲をみんなでいちばん時間をかけてアレンジした“ビーチバレイ”は、歌詞の儚さと脱力感も気に入ってます。熱いのか冷めてるのかわからないような、曖昧な夏の思い出の歌ですね。それから“卒業”には、大人びていく自分への苛立ち、誰かとの別れを本気で惜しむ青臭さへの憧れが込められていたりします」。

 2016年に結成されたバレーボウイズの活動はまだ始まったばかり。とはいえ、彼らの高い志を聞くと、今後にますます期待してしまう。

 「どんな人でも自分の音楽を表現できるような場所を作りたいです。〈センスがない奴はやめちまえ〉〈演奏が下手な奴は出てくるな〉〈歌が下手な奴は歌うな〉〈変なスタイルの音楽はやめろ〉──そういうことを言う人たちはどこにだって、いつだっているだろうけど、僕は嫌いで。ただ、そこに言葉で反抗するのではなく、行動で見返したいですね。そのためにも、あと、バレーボウイズの音楽を〈好き〉と言ってくれる人たちのためにも、〈音楽〉という文字の通り、固定概念に囚われずに思いっきり音を楽しんでやろうと。そして、少しでも誰かの背中を押すことができればと思いながら活動する。この信念だけは曲げません!」。

 


バレーボウイズ

前田流星(ヴォーカル)、オオムラツヅミ(ヴォーカル)、ネギ(ギター/ヴォーカル)、高山燦(ギター/ヴォーカル)、九鬼知也(ギター)、矢野裕之(ベース)、中野(ドラムス)から成る7人組。2016年、京都市左京区で結成。2017年3月に開催された年齢・性別・国籍不問の大型オーディション企画〈TOKYO BIG UP!〉でグランプリを獲得し、今夏には〈フジロック〉の〈ROOKIE A GO-GO〉や、京都の4会場で行われたライヴ・イヴェント〈ナノボロフェスタ〉などに出演。知名度を全国区へ広めるなか、7月のEP『なつやすみ』、10月の7インチ『アサヤケ/夏休みがおわる』に続いてファースト・アルバム『バレーボウイズ』(OCTAVE)を11月8日にリリースする。