兄貴とケンカ別れして以降もバンド形態にこだわってきたリアム・ギャラガー。ノエルのソロ・デビュー時に辛口ツイートをしていた彼が、まさかシンガー・ソングライターとして再出発するとは! でもまあ、先行シングルはオアシスの影をモロに引きずった出来で、良くも悪くもこの人は変わらないよな、と思っていたのだが……。もちろん、エレキを強調したそれっぽいロックンロールやビートルズ愛に満ちたサイケ・チューンなど、バンド時代の流れに沿った曲もサーヴィス程度にいくつか入っている。しかし本作の主役は、シンプル&オーセンティックなフォーク“Paper Crown”や、オーケストラルなアレンジが楽しいワルツ“When I'm In Need”をはじめ、柔らかな音色と優しい歌を聴かせるスロウ~ミディアムだ。抑揚を抑えたメロディーに大人の余裕が感じられ、こんなリアムと会えるなら歳を取るのも悪くない。8年前の涙も、3年前の〈またかよ!〉感もこれでチャラかな。