JOHNNY MATHIS
クライヴ・デイヴィスとベイビーフェイスが仕掛ける極上のニュー・スタンダード集!

 ジョニー・マティスがアメリカのニュー・スタンダードを歌う――何とうってつけの企画だろう。本格的なジャズからソウル(トム・ベルやジョニー・ブリストルと組んだ作品群の素晴らしさときたら!)、AOR(ダイアン・ウォーレン曲集『Because You Loved Me: The Songs Of Diane Warren』とか最高!)など、その時々の流行を巧く採り入れて多様なサウンドを乗りこなしてきた彼こそ、ポピュラー音楽界の大将と呼ぶべき男。今回の『Johnny Mathis Sings The Great New American Songbook』でエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたのは、ロッド・スチュワートの〈The Great American Songbook〉シリーズを生み出し、大御所たちのカヴァー・ブームを作ったクライヴ・デイヴィスだ。この時点でハマりすぎのキャスティングと言えるが、期待通り的を射たグレイトなヴォーカル作品に仕上がっているのである。

JOHNNY MATHIS Johnny Mathis Sings The Great New American Songbook Columbia(2017)

 取り上げたナンバーはファレル・ウィリアムズ“Happy”、ブルーノ・マーズ “Just The Way You Are”、アデル“Hello”をはじめとした泣く子も黙る超ヒット曲。とりわけ主役の甘くて温かい歌声が光るのは、R・ケリー“I Believe I Can Fly”のようなバラード系か。スタジオ作業を全面的に任されたベイビーフェイスは、豪奢なストリングスなど品のある装いを施し、〈これぞMORの鏡!〉と唸らずにはいられない耐久性の高いトラックを構築。そんな本作は、厳かなムードに包まれた“Hallelujah”で幕を開ける。クライヴ主催のグラミー前夜祭でもジェニファー・ハドソンが熱唱していたレナード・コーエンの名曲だ。そして締め括りは、クライヴがデビュー以来ずっと支え続けたホイットニー・ヒューストンの“Run To You”(映画「ボディガード」の挿入歌)。クライヴにとって人生で忘れられない2人への思いが滲んだこの構成も、本当に素晴らしい。