INTERVIEW

H ZETTRIOがクリスマス・アルバムに振り掛けたスパイスとは? 定番の聖夜ソングゆえに発揮できた、自由な冒険心を語る

H ZETTRIO『H ZETTRIOのChristmas Songs』

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  • 2017.11.08
H ZETTRIOがクリスマス・アルバムに振り掛けたスパイスとは? 定番の聖夜ソングゆえに発揮できた、自由な冒険心を語る

H ZETTRIOが新作『H ZETTRIOのChristmas Songs』をリリースした。トリオとしてのファースト・アルバム『★★★』(2013年)から4年。これまでに3枚のオリジナル・アルバム、今年に入ってからは配信の連続リリースを行うなど次々に曲を書き上げ、ライヴハウスのツアーに大型フェス出演、ホール公演とたくさんのライヴを行ってきた。そんな彼らのキャリアのなかでも、コンセプト・アルバムであり、しかも収録曲のほとんどがカヴァーというこの作品はちょっと異色だ。

蓋を開けてみるとシンバルのレガートとウォーキング・ベースで4ビートのジャズ・マナーに仕上げられた曲があったり、しっとりとしたバラードがあったりと、ハイテンションでアグレッシヴな普段のH ZETTRIOとはまた違った魅力が見え隠れする。そして、そういったいつもとは違う雰囲気が、彼ららしいバキバキのキメが光るアップテンポな楽曲をさらにパワフルに聴かせる。〈クリスマス・ソング〉というある種ネタが出し尽くされたかのように思われる題材が、彼らの新しい魅力を引き出したともいえるのではないだろうか。

今回はそんな新作について、先日行われたワンマンライヴの話を皮切りにH ZETTRIOの3人に話を訊いた。

★H ZETTRIOが魅せた、自由奔放な〈楽しさ〉! ジャンルを超えるエンターテインメント繰り広げたワンマンをレポ

H ZETTRIO H ZETTRIOのChristmas Songs apart.RECORDS(2017)

 

 

お客さん自身が楽しみを見つけられるよう隙間を大事にしている

――先日、東京・昭和女子大学人見記念講堂で開催されたワンマンライヴ〈H ZETTRIO IN TOKYO ~秋の大感謝祭~〉でのMCで〈今バンドの調子が良い〉っていうふうに話されていましたよね。

H ZETT NIRE(ベース/以下、N)「私が言ったんでしたっけ(笑)? 僕のパソコンには、リリースした音源じゃないライヴの映像だったりリハの録音だったりがいっぱいあって、そういうのを見返してみるとすごい良くなってきているなと。2年ぐらい前の録音を聴いても、自分のパートに関してですけど〈今だったらもうちょっとちゃんと弾くんだけど〉って思う」

――他のメンバーの方もそう感じますか?

H ZETT M(ピアノ/以下、M)「そうですね。悪くなっていたらやる気が……(笑)」

N「そりゃそうだね(笑)。ただ、ずっと前の録音だったら、また違う感想なんですよ。15、6年前の録音もなぜかうちにいっぱいあって、聴いてみると下手なんだけど、すごく歯を食いしばって弾いているのがわかるんです。それはそれでおもしろかったりとか」

M「NIREさんとKOUさんのリズム隊のグルーヴ感は進化しているんじゃないですか?」

N「おおっ!」

H ZETT KOU(ドラムス/以下、K)「なかなかないですからね、彼がこんなことを言うの(笑)」

M「視点がミクロというか細やかなところまで見えてきているんじゃないかな。やっぱりそれは2人がグルーヴを追求しているからだと思います」

2017年の配信シングル“SEVEN”
 

――ライヴを観ていて〈どこまでが決まっていることで、どこまでが即興でやっていることなんだろう?〉と気になりました。

M「ある程度の枠というのはありますね。まぁCDと違うことをやっていたらそこはアドリブです。ソロに関しては、盛り上がったから〈もうちょっといっちゃえ!〉ってときもありますね。バンドのなかで〈大体これぐらいですよね〉っていうのはありまして、〈今日はもうちょっとだけ〉ってときは幅を拡げたりとか」

N「この間の京都でやった〈ボロフェスタ〉でのライヴでは、〈今日は時間がタイトだから、この部分の掛け合いを短めにしよう〉って話をしていたのに、本番になったら〈伸ばせ!〉って合図が出たりしたよね(笑)。ベースとドラムの掛け合いの予定だったのに、H ZETT Mくんがショルダー・キーボードで入ってきたりして」

――そういうのはお客さんを見ながら変えていくことが多いんですか?

M「まぁお客さんを見ながらっていうのもありますけど、京都のときは時間を見ながら、でしたね」

N「ぴったり終わったよね」

M「あと3秒だった(笑)」

 

〈DANCING!!! TOUR 2015〉より“Beautiful Flight”のライヴ映像
 

――ライヴを観ていると、トリオになってからというか、最近のH ZETT Mさんは生のピアノにこだわっているのかなと感じました。

M「そうですね。僕はクラシックピアノからはじめて、ジャズとかロックとかいろんなジャンルをやってキーボードにいったんですけど、キーボードでいろんな音を出すってことが好きだったんです」

――それが変わっていったと。

M「もっと上をめざすというか、ちゃんと考えて音楽に向き合うとしたときに、だんだんとピアノの重大さみたいなところに目がいったというか。初期の段階に戻ったのかもしれないですけど、いろいろな挑戦を経てピアノが表現しやすいなというか、ピアノがいいなという気持ちに年々なっていますね」

――この間のライヴではキーボードも生ピアノに近い音色に設定されていましたよね。

M「そうなんですよね。PAがやりやすいという話もあるんですけど、(キーボードだと)前を向けるのでパフォーマンス面での比重が大きいっていうのもあります。それは曲の雰囲気で使い分けていますね。グランドピアノでは前を向けないから、前を向きたい曲のときには、(ピアノに近い音色などを用いつつ)キーボードを使うっていう感じですね」

――前を向いてのパフォーマンスであったり、手拍子を促したり、H ZETTRIOのライヴは観客が演奏に入っていけるスペースがありますよね。

M「それはアレンジのときから考えているかもしれないですね。でも、考えていなかったのに手拍子が起こる曲になった、っていう曲もたくさんあります」

――へぇー!

M「〈ここでこうやって下さいね〉なんて思わずに曲を書いたけれど、そうなったみたいな。そういうのをお客さんが見つけてくれて、勝手に楽しんでくれるといいなと思います。そこに入れるような隙間というか、お客さんがいろいろ見つけられるところはあってもいいかなと思っているかも。だから、そういうふうに聴こえているのかな」

――なるほど。

N「地方を回っていたりすると、場所によっては、サビが終わってソロになってもまだ手拍子が止まなくて〈今日のお客さんすごいな!〉ってなるときがありますね。そういうときは僕らも身体のアクションでお客さんに合わせたり、お客さんがノリやすいような雰囲気を作ったりしています」

〈WONDERFUL FLIGHT TOUR 2016 〜Acoustic & Electric〜 こどもの日 Special〉より“Neo Japanesque
 

真夏の物凄く暑い日にクリスマス・ソングを録音していた

――今作はクリスマス・アルバムということなんですけど、制作のきっかけは?

M「きっかけは、昨年に大阪の阪急百貨店からの依頼で、クリスマスのイヴェント用に“祝祭広場のクリスマスマーケット”という曲を作ったんです。それがわりと好評をいただいたので、〈また来年もできればいいなぁ〉みたいなに話をしていたら、今年もやらせていただくことになって。で、またオリジナル曲を作ったんですけど、クリスマス・ソングっていうのは既成の曲にも良い曲がたくさんあるので、それらを混ぜてアルバムを作っちゃいたいな、みたいな構想が少しずつ出てきて」

N「 “祝祭広場のクリスマスマーケット”っていう曲は、我々の演奏以外にストリングスを入れるという初の試みもあり、とても新鮮だったんです。世間や周囲の反応も伝わったので、ぜひアルバムにしたいなと」

――それが今年の半ばぐらいですか?

M「そうですね。夏にはレコーディングしていたので」

K「真夏の物凄く暑い日にクリスマス・ソングを録音してたよね(笑)」

M「そうそう。ファッション業界ってこういう感じなのかなって(笑)」

K「今回は短時間でどわっと録ったんですよ」

N「だから、レコーディングに際しての集中力みたいなものは上がっていますよね」

K「それはあるかもね」

――それにはやっぱり、今年の4月から実施されていた6か月連続での新曲配信をやり遂げた積み重ねもあるんじゃないですか?

N「短い期間で録るということは大変でもあるんですけど、勢いが凝縮されるような感触もあるんですよ。活きがいいというか鮮度がいいというか。煮込みっていうよりも、刺し身とか寿司みたいな」

――選曲もメンバーのみなさんで行われたんですか?

M「〈クリスマス・ソングってどういうのがあるかな?〉って考えて、もちろんいっぱいあるんですけど、今回はわかりやすいものを選びましたね」

K「思いついたものは全部録った感じだよね。まだ残っているのはマライア・キャリーぐらいでしょ?(笑)

M「そうだね(笑)」

――普通の人が思いつくクリスマス・ソングはだいたい入っていますよ、これ(笑)。

N「マライア・キャリーがOKだったら拡がりすぎて大変でしょ(笑)」

――山下達郎さんも入れるか、みたいな。

N「そうそう(笑)。だからスタンダードというか、昔から聴かれているものになりましたね」

M「山下達郎さんがOKだったら稲垣潤一さんも……」

N「ほらほら! あと3枚ぐらい出来ちゃうよ(笑)。毎年出せる」

次ページわかりにくくても気にしない、みたいな意識がほんのちょっとだけある
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