〈ブレインフィーダー唯一の女性アーティスト〉なる看板も今は昔。アンダーソン・パックやギャヴィン・テューレックといった旬のアーティストとの共演を経て、西海岸屈指のトラックメイカー/プロデューサーへと大きく成長を遂げた才媛の4年ぶりとなる3作目。荘厳に幕を開けるインスト曲“Lune”、そこからコーラスが印象的な“Rouge”へとシームレスに雪崩れ込み、小気味良いトラップ“Thief”、シンセがメロディアスな“I Wish I Could”、前作から参加のMNDRを迎えた“We Love”とヴォーカル曲が続くという冒頭の構成からして完璧。後半に入り、マレーシアのユナを迎えた先行曲“Don't Call Me”や、ベルギーの歌姫、セラー・スーとの“Early to Dawn”といった客演陣との楽曲を随所に挿し込みながらも、彼女の音楽性が本来持つエレガンスと、肩肘張らずに聴き込めるポップネスの双方を備えた作品に仕上がっている。さまざまな経験が結実して、ある種の〈覚醒〉を果たしたと言っていい。