1年半ぶりのニュー・アルバムは、トラップやアンビエント系のサウンドを積極的に採り入れながら、タンク流の濡れたR&B表現へ昇華した意欲作。冒頭の表題曲からして、高速ハイハットの上で同じメロディーを訥々と繰り返し歌う様子は昨今のラッパー風でもある。続く“Everything”も重たいトラップ系ビートとシンセを果敢に掻い潜る佳曲だが、ここではゲストに迎えたトレイ・ソングズとリュダクリスの小気味良い乗りこなしに軍配が上がるか。いずれにせよ、歌が乗る器のトレンド云々を超えてR&Bフリークの心を震わせる、タンクならではの肉感的なソウルフルネスはこのアルバムでも存分に味わえるのでご安心あれ。モヤモヤと霞がかったトラックに悩ましい歌声を注ぐことでいっそう湿度を上げる“Sexy”、アトモスフェリックな音像の中からストロングなヴォーカルの輪郭を黒々と浮かび上がらせる“F It Up”など、自身の歌が映える余白をたっぷり取ったスロウ群では特に新たな試みが成功していると言えるだろう。