皆さん、どうもはじめまして。ディグった土で、ツボを作る! 〈BRIAN SHINSEKAIの壺〉第1回でございます。ここでは来年1月に発表する初アルバム『Entrée(アントレ)』を作るにあたってインスピレーションを受けたカルチャーを、全3回に渡ってご紹介していこうと思います。まずはこちら、UK産ポップスの金字塔、プリファブ・スプラウト“We Let The Stars Go”です。僕が『Entrée』制作時にサウンドのテーマとしたのは、ニューウェイヴ(主にシンセ・ポップ)と近年のEDMの親和性/共通点と、〈EDM以降の音楽はどうなるんだろう?〉ということでした。その時、80年代後半のソフィスティ・ポップ――ネオアコやブルーアイド・ソウル系の音楽がフッと浮かび、特に極限までメロディーの美しさを追求する職人型作曲家、パディ・マクアルーンの音楽はまったく古く聴こえないなあと強く感じたのです。

 彼の音楽は、教会音楽とアメリカン・ポップスとグラム・ロックが混ざりつつも、まるで現代のガーシュインと言いたいほどにエヴァーグリーンなポピュラー・ミュージックです。壊れてしまいそうに繊細で、このうえなく美しい。でも、ライトなポップス。彼のそんなバランス感に、大きく影響を受けてまず最初に作ったのが“首飾りとアースガルド”でした。

 “首飾りとアースガルド”のサウンド構築にあたり、80s特有のリズム・パターンを2017年式に昇華したダンス・ミュージックにしたいと考えました。そこでヒントにしたのがデヴィッド・ボウイ“Modern Love”と、パニック! アット・ザ・ディスコ“Girls/Girls/Boys”です。

 ボウイはベルリン時代(77年作『Low』『Heroes』、79年作『Lodger』)が特に好きですが、ナイル・ロジャースがプロデューサーとして参加した『Let's Dance』(83年)に宿るソウルフルなリズムやグルーヴは、2017年に聴いても身体の芯から揺れる、時代を超越した魅力があります。でも、タイトなんですよね。本作に収録の“Modern Love”で使われている、80sを象徴するようなドラムマシーンを、その34年後に生きる2017年の感覚で再構築した結果、リヴァーブやディレイは減り、さらにクールでタイトなチル・サウンドになりました。そのほうが2017年的だと僕は思ったんです。

 そして、80sと2017年を繋ぐサウンドを作るために大きく刺激を受けたのが、“Girls/Girls/Boys”でした。全体の構成要素は80sそのものでありながら、しっかり今の音で最新のポップスになっている細かいギミックは、Vineも使いこなしたブレンドン・ユーリーならではのトレンドを掴む感覚によるものでしょう。結果的に、90年代のダンス・ミュージックの質感に近くなったようにも思います。ファッションも90sスタイルがトレンドの趣がありますが、自然に僕もそこへ辿り着いたということですね。

 次回は、サウンド面以外も掘り下げてさまざまな作品をご紹介します。第3回を終えて、どんな壺が完成するのでしょうか!? お楽しみに。

 


BRIAN SHINSEKAI
2枚のミニ・アルバムを残したブライアン新世界、バンドのBryan Associates Clubとしての活動を経て、2017年9月に現名義でのプロジェクトを始動。2018年1月24日にリリースされる初アルバム『Entrée』(ビクター)に先駆け、収録曲を徐々に公開中。11月22日より“ルーシー・キャント・ダンス”が配信開始!
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