COLUMN

BILLIE IDLE®『LAST ALBUM』 これで最後のはずがない? 刺激的なタイトルの新作に込められた野心的なサウンドとは

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2017.12.04
BILLIE IDLE®『LAST ALBUM』 これで最後のはずがない? 刺激的なタイトルの新作に込められた野心的なサウンドとは

気ままにマイウェイを歩んできた〈NOT IDOL〉な実力派グループのニュー・アルバム! 『LAST ALBUM』を謳った問題作の中身とは?

 『LAST ALBUM』というタイトルをどう解釈するかはさておき、わざわざそう謳っていることの意味は感じざるを得ない。結成から丸3年、BILLIE IDLE®は大きな転機を迎えている。

BILLIE IDLE® LAST ALBUM オツモレコード(2017)

 IDOLではなくIDLE。〈ネオ80's〉をテーマにしたサウンド/ヴィジュアルで独自の世界観を構築してきたBILLIE IDLE®は、(写真左から)アキラ、ファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミ、モモセモモの4人から成るガールズ・ヴォーカル・グループだ。かつてBiSの一員として名を馳せたウイカとヒラノがNIGO®×渡辺淳之介の共同プロデュース体制で2014年に結成を発表し、2015年にアルバム『IDLE GOSSIP』でデビュー。同年秋の2作目『ROCK "N" ROLL IDLE』を経て、昨秋のサード・アルバム『bi bi bi bi bi』から現体制となってマイペースに活動してきた。

 初作のジャケが爆風スランプ『よい』(84年)のオマージュだったことからもわかるように、彼女らの標榜する〈ネオ80's〉は巷のニューウェイヴ・リヴァイヴァルやポスト・パンク、あるいはトレンドとして記号化された80年代っぽさとは似て非なるもの。リアルタイムで当時の空気を吸収してきたNIGO®目線ならではの、時にキッチュで時にイナタく時にヴィヴィッドな80年代マナーが当世流に表現されているというわけだ。

 ゆえに彼女らのサウンドには、ネオロカや80sパンクを下地に、ニューウェイヴ歌謡からバンド・ブームに至るまでのキャッチーなエッセンスが独特の粋なバランスでミックスされている。そんな世界を音の面で具現化するのは逆に往時を知らない世代のサウンド・プロデューサー、KEVIN MARKS。そこに絡む、パンチのあるウイカとシャープなモモセを軸にした歌唱も、ありそうでなかった音楽性にジャストでハマるものだ。今年に入ってからは4月にベスト盤『BILLIed IDLE』とライヴ盤『LAUNCHING OUT』を同時リリースして全国ツアーを行い、8月には初のCDシングル“MY WAY”も発表。いつになく旺盛なリリースを続けていた彼女たちから今回届いたのが通算4枚目のスタジオ・アルバム『LAST ALBUM』というわけだ。

 『bi bi bi bi bi』から連なるアートワークのただならぬ不穏さはともかく……アルバム全編はポップな驚きと彩りで満たされている。カラリと乾いたロック・チューン“MY WAY”に続き、先行配信された“さよならロマンティック”はいままでにないテクノ歌謡風のナンバー。PWL調の妖しい“東京マリールー”、スカと疾走ロックを爽快に行き交う“ライダー”、タイムレスなビート・パンク“それって偶然!”や“ひっくり返して”、グルーヴィーなファンク・ロックの“Lesson Time”とKEVINの繰り出す楽曲の振り幅は広がりまくり。さらにはマイティ・マイティ・ボストーンズあたりを思い出させる陽性のスカ・パンク“愛SUNSUN”、オアシス風の導入で掴む感傷的なミディアム“STAY”のように〈ネオ80's〉を飄々と逸脱する試みまであるのだ。ただ、その“STAY”では〈3年かかってあなたのもとへ そろそろ届いたかなあ〉と歩みを振り返るような言葉も綴られ、他曲では皮肉めいた本音のようなものも垣間見せつつ、結びの“ラストソング”では別れの挨拶が繰り返される。作詞はメンバー各々のペンによるものだが、ここまで別れを匂わせられると、逆にそうじゃない結果を想像させられもするのだが……。

 そんな諸々の意図するところは、現在行なわれている〈LAST TOUR〉が終わる頃には明らかになるのかもしれない。それが不吉な予感的中となるのか、あるいは新しい道となるのか……いずれにせよ何もないということはないだろう。いまはLASTの先の地平を期待しながら、彼女たちにとって大きな節目となるこの『LAST ALBUM』のカッコ良さを堪能しておくしかない。

タグ
関連アーティスト