COLUMN

ウォーク・ザ・ムーン『What If Nothing』 ブレイクから3年、アリーナ級のスケールを手にした彼らの新たなOne Foot!

  • Share on Tumblr
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2017.12.07
ウォーク・ザ・ムーン『What If Nothing』 ブレイクから3年、アリーナ級のスケールを手にした彼らの新たなOne Foot!

 個性派の脇役から主役級の大物へ――そんなドラマティックな変貌ぶりとも言えるだろうか。ウォーク・ザ・ムーンがこのたびのニュー・アルバム『What If Nothing』でスケール感を断然アップ。〈単なるパーティー・バンドじゃないんだぞ!〉と言わんばかりのヴァイタリティーと底力で圧倒する。

WALK THE MOON What If Nothing RCA/ソニー(2017)

 オハイオ州はシンシナティの大学生だったニコラス・ペトリッカを中心に結成された彼らはすでに10年近いキャリアを誇り、インディー時代も含めると今作が4枚目のアルバムとなる。トーキング・ヘッズやキラーズの後を継ぐポップ/ロック・グループとして人気を博してきたのだが、やはり大きな転機となったのは、前作『Talking Is Hard』(2014年)からのシングル曲“Shut Up And Dance”だろう。全米ロック・チャートで首位を獲得したのみならず、総合チャートでも最高4位を記録した同曲によって、バンドの存在は広く知られることに。その勢いのままMTVビデオ・ミュージック・アワードやアメリカン・ミュージック・アワードにもノミネートされ、ビルボード・ミュージック・アワードではロック部門を受賞。ところが、新作では前作のプロデュースを手掛けたシュガーカルトのティム・パグノッタに代わり、新しい顔ぶれを起用。心機一転ムードに溢れている。

 「ウォーク・ザ・ムーンの全キャリアを賭けて臨んだ今回のアルバムでは、マイク・エリゾンドとマイク・クロッシーという2人の素晴らしいプロデューサーと一緒に作業したよ。2人のバックグラウンドは凄く異なっていて、エリゾンドはヒップホップで成功した人、クロッシーはロックンロールの天才なんだ。いまの僕らにとっては完璧なタッグだったんだよね」(ニコラス:以下同)。

 前者はドクター・ドレーやエミネム作品に加え、マルーン5やエコースミスなども手掛けるLA出身のミュージシャン。後者はアークティック・モンキーズや1975仕事で名を上げたUK生まれのプロデューサー。ウォーク・ザ・ムーンにはピッタリの人選と言えそうだ。どうりでアルバムにはエレクトロ・ポップやガレージ・ロック、レゲエにニューウェイヴ・ファンクまで実に多彩な楽曲がテンコ盛り。そうしたさまざまなアレンジを、ダイナミックかつ立体的なバンド・アンサンブルで巧みにまとめ上げている。「より高く、より幅広く、広大で壮大なサウンドだよ」とはニコラスの弁。疾走感やパーティー・モードはしっかりキープしつつ、モダンな手法をドシドシ導入し、イマジン・ドラゴンズやワンリパブリックにも通じる自由度の高いスタジアム・スケールのロックを轟かせている。

 さらに“Shut Up And Dance”にも関わっていたキャプテン・カッツ(スモールプールズやチェインスモーカーズとの絡みでもお馴染み)が、今回もリード・シングル“One Foot”をはじめとする数曲を共同プロデュース。もちろん二匹目のどじょうを狙うといった雰囲気はなく、次のステージにステップアップせんとした意気込みがとかく前に出ている。

 「“One Foot”はアルバム全体のテーマを要約してもいる。〈最初の一歩を踏み出して前進しよう〉って曲なんだ。僕の恋愛経験にもインスピレーションを受けているし、バンド・メンバーとの関係も反映している。〈未知の世界に向けて前進していこう〉という僕らの決意なんだよ」。

 前作をリリースして以降、ニコラスは父親と死別し、恋人とも破局、しかもメンバー間には不協和音が渦巻いていたとか。そんなグループが気持ちをリセットし、サウンド的にも大きく飛躍を遂げた本作。オープニング・ナンバーはその名も“Press Restart”だ。来年2月まで続く北米ツアーにも同じ名前を掲げ、30代に突入してリスタート・ボタンを押した現在のウォーク・ザ・ムーンには、ロッカーとしての新たな決意が漲っている。

 


ウォーク・ザ・ムーン

ニコラス・ペトリッカ(ヴォーカル/キーボード)、イーライ・マイマン(ギター)、ケヴィン・レイ(ベース)、ショーン・ワーガマン(ドラムス)から成る4人組。ポリスの“Walking On The Moon”をバンド名の由来とし、2008年にオハイオで結成。何度かのメンバー交代を経て2010年初頭に現在の編成となり、同年11月にファースト・アルバム『I Want! I Want!』を自主リリースする。その後、RCAと契約して2012年に2作目『Walk The Moon』を、2014年に3作目『Talking Is Hard』を発表。翌年には〈サマソニ〉出演のため初来日。1年半の活動休止期間を挿み、今年10月にシングル“One Foot”で復帰。このたびニュー・アルバム『What If Nothing』(RCA/ソニー)をリリースしたばかり。