INTERVIEW

京都発のSeuss、2017年を通して作った〈Fun×3〉な音楽の場を語る「ライヴに集中しなくていいし、お酒を飲むだけでもいい」

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  • 2017.12.04
(左から)前田凌奥畑詠大、谷本悠馬、金子勇貴
 

2013年の結成以降、世界のインディー・シーンとオンタイムで共鳴する、ローファイでサイケデリックなサウンドが評判になり、〈関西インディー新世代〉の注目株として、瞬く間に地元のライヴハウスやクラブの人気者に。新進バンドとしては、まずまずのスタートを切ったように見えていたSeuss。しかし、彼らはなぜかそこから、50年代のオールディーズ/ロックンロールや60年代のポップスに傾倒していく。2016年の後半頃には、ライヴで初期の人気曲を演奏することもほとんどなくなった。

とはいえ、完全に過去を捨てたというわけでもない。2017年にリリースした2枚のEP『C’mon Baby』や『Fun,Fun,Fun』を聴いてもわかるように、結成当初に持っていた肩の力が入っていないローファイ嗜好には変化なし。インディー特有のダルな空気と、ポップ音楽がエンターテインメントとして花開いた50~60年代の熱狂が絶妙に混ざることで、彼らはより幅広い層や世代にアプローチできる、現代的なレトロ感を手に入れた。

そして、それはライヴでこそ本領を発揮している。2016年の12月より、京都のバー〈THE WELLER'S CLUB〉で入場無料のマンスリー・イヴェント〈Fun,Fun,Fun〉をスタートさせ、ライヴハウスでの公演とは一味違った、カジュアルでラフな音楽の場を作りつつ、今年2017年の9月には京都・丸太町METROを舞台に、踊ってばかりの国、DYGL、バレーボウイズというまったく出自の異なるバンドを、ひとつの空間で繋ぐイヴェントを成功させた。

そして、12月9日(土)には大阪・中崎町NOON+ CAFEにて、これまでの集大成となるワンマンライヴ〈Fun,Fun,Fun One Man Show〉を控えている。今回はメンバー全員に集まってもらい、これまでの歩みとワンマン当日への意気込み、さらには2018年の動きについても、いろいろと話を訊いてきた。

インディー好きも、コテコテのロカビリーが好きな人もライヴに来てくれている

――2013年の結成以降、Seussは同時代のインディー然とした音楽性から、徐々に50~60年代のオールディーズやロックンロールに傾倒したサウンドへと変化していきましたね。そもそも結成当初はどんなバンドに影響を受けてきたんですか?

谷本悠馬(ヴォーカル/ギター)「まさにアメリカやイギリスのインディー・ミュージックから影響を受けていました。その頃、サイケデリックなサウンドの流れがあったじゃないですか。その辺の音源を漁って聴いて、どうやってるのかを考えて」

――例えばどんなアーティストに惹かれたんですか?

前田凌(ドラムス)「ディアハンターやアリエル・ピンクは大きかったです」

――当時は、みなさんの仲間でもあるHAPPYやThe fin.、Homecomingsらを中心とした、関西のインディー新世代にとりわけ注目が集まっていた時期でしたが、周囲に対してライヴァル意識みたいなものはありましたか?

谷本「最初はあったんですけど、僕らの音楽性が変わってからは何も思わなくなりましたね。〈これがやりたい〉って強く思えるものができたから、周りのバンドがやっていることを良いと思うことはあっても、自分たちと比較することはなくなりました」

――結成から3年を経てリリースした『Today Was Good』(2016年)は、現在のオールディーズ/ロックンロールを前面に出したスタイルに移行していく途中にあったアルバムだと思うんです。

金子勇貴(ギター)「確かにそういうアルバムでしたね。その頃のライヴでは、今のスタイルにどんどん近付いてましたし」

『Today Was Good』収録曲“Little Boy”
 

――ただ、特に『Today Was Good』に収録していた“Little Boy”は、初期のインディー路線のなかでももっともアッパーな人気曲で、ミュージック・ビデオを公開したときもリスナーからの良いリアクションがあった印象でした。私自身も〈最後は”Little Boy”で大団円〉、みたいなライヴを何度も観ていましたし。〈いよいよこれから〉という時期に、なぜスタイルを変えていったのでしょうか?

前田「『Today Was Good』のリリース前後に“Dancing Stupid”とか“Sunny Girl”が出来たことがきっかけかも。“Dancing Stupid”は〈なんかビーチ・ボーイズっぽくていいね〉ってみんなで話してたような記憶があります。そこで味を占めたというか」

『Today Was Good』収録曲“Dancing stupid”
 

谷本「最初は僕ららしくないって思ってたんですけど、だんだんそっちのほうが良くなってきたんですよね。作ったときは60年代とかオールディーズとか、全然考えてなかったんです。そういうことを意識し出したのは作って半年後くらいでした。それ以降はオールディーズに接近した曲を増やしていって、かつソウルやジャズにも触れるようになって、今に至るって感じですかね」

――ファンが減るんじゃないかとか、そういう迷いはありませんでしたか?

谷本「そこは迷わなかったです。きっとみんな好きでいてくれるって思ってました。スタイルが変わっても状況が変わるとは思ってなかった。でも、実際はけっこう変わりましたね」

奥畑詠大(ベース)「HAPPYやThe fin.が好きという流れで僕らを知ってくれて、そのまま残ってくれてる人もいるんですけど、今ライヴに来てくれている人たちのほとんどは、前とは全然違いますね。例えばTHE BAWDIESやgo!go!vanillasが好きだっていう人たちがたくさんいたり。やってることは狭くなってるんですけど、来てくれるお客さんの層は広がりました」

谷本「インディーが好きな人も、コテコテのロカビリーが好きだって人もいるし、年齢層も広がったし」

――フェスやサーキット・イヴェントでライヴしたときのオーディエンスの反応はどうですか?

前田「サイケをやってた頃は、自分たちの力量もあると思いますけど、僕らに対して興味のない人にアプローチするのは難しかった。でも今やってる音楽は、多くの人が自然に〈なんか楽しいぞ〉って思える音楽なんだと感じます。それはやってみて気が付いたことですけど」

――音楽性が変わることで、各パートのフレーズも以前とは違ってきています。音色がもっとも大きく変わったのはギターだと思いますが、演奏することに違和感はなかったですか?

金子「機材もガラッと変わりましたけど、違和感はなかったですね。〈カッコイイな〉ってすんなり入れたんで」

――なるほど。最初はメンバー全員のインディーという共通言語がありつつ、メンバーの誰も反ることなく今の方向に向かうことができたんですね。

谷本「そうですね。だから今もインディーは好きだしたまにやりたくなります。もしかしたら、こだわって偏ったことをやってるっていう見方もあるかもしれないけど、実はそんなに肩に力は入ってない。今はこれが好きなんだって、素直にやりたいことをやれてるんです。LEARNERS のCHABEさんも似たような事を言っていましたけど、〈形式ばったことをやろうとしてるんじゃなくて、今に発信できることをやったら、たまたまロックンロールだった〉という感じですね」

 

ライヴに集中しなくていいし、お酒を飲むだけでもいい。そういう遊び場が欲しかった

――サウンドの変化はもちろん、誰の目から見ても明らかに変化が起きたのはライヴ活動ですよね。2016年12月から、京都の老舗ミュージック・バー〈THE WELLER'S CLUB〉で入場無料のマンスリー・イヴェント〈Fun,Fun,Fun〉を開催するようになりました。なぜライヴハウスではなくバーでのイヴェントを選んだのですか?

谷本「ライヴハウスでやると、お客さんは〈ライヴを観ること〉が目的になるじゃないですか。始まる前からフロアでスタンバイして、ライヴがスタートするとじっくり観て聴いて。でも、そうじゃない楽しみ方があるって、ずっと思ってたんです。フラッと遊びに来て、別にライヴを観ることに集中しなくていいし、ただお酒を飲むだけでもいい。そういう遊び場が欲しかったのと、Seussがそこにハマるバンドだと見られたかったからですね」

前田「〈今からSeussのライヴです〉みたいな感じで、始まる前にステージの方に来て観てもらうというよりは、もっとラフがよかった。別に演奏と関係ないところで笑いたかったら笑えばいいし、喋りたかったら喋ればいいし」

奥畑「〈Fun,Fun,Fun〉を始める以前のライヴで、お客さんの視線に違和感を感じることがあったんです。例えばYogee New Wavesは角舘(健吾)くんのパーソナリティーや歌の力があってこそだから、みんなが彼の動きに注目するのはわかるんですけど、僕らって誰もそんな存在じゃない」

谷本「わかる、わかる。ライヴはお客さんと一緒に作るものだっていうのは、みんなそうかもしれないけど、僕らの場合はお客さんの主体性がより強いというか」

2017年のEP『Fun,Fun,Fun』収録曲“Fun,Fun,Fun”
 

――告知も〈〇時頃から演奏します〉みたいなラフな感じで。オリジナルもやりつつ、お客さんのリクエストでカヴァーもやる。終わる時間も空気を見て決めていましたよね。

谷本「この間なんて“Johnny B. Goode”を2回やりましたからね」

金子「これまでもカヴァーはやってたんですけど、さらに頻度が増えて、それがオリジナルのアレンジにも活きてきたんです。昔と比べたら引き出しが増えました」

前田「そもそも僕らは〈やるぞ〉みたいな熱量がほかのバンドと比べたら少ない。だから、今は僕ららしく気取らずやれていて、ストレスはほとんどないですね。カヴァーのレパートリーを増やさなきゃいけないから、覚えるのは大変ですけど」

――今年の6月に渋谷7th FloorでSeussのライヴを観たときに、〈Fun,Fun,Fun〉を始めた理由やその結果がはっきりと見えた気がしました。あの7th Floorもバーとしての要素が強いですし、その日のライブもSeussのことを知らなかったお客さんがほとんど。でも、Seussの演奏がはじまるとステージを観ずに踊りまくっている人もたくさんいたし、あの自由な空気はなかなか出せない。そこで飲んだくれてるお客さんは〈日常〉と〈音楽〉との距離が近いんだと思えた。

谷本「そう感じてもらえていたなら本当に嬉しいです。とはいえ、僕らのライヴを初めて観る人のなかには、戸惑う人もいるんです。MCでお客さんを煽ったりもしないから、気合い入れてライヴを観る人にとっては、緩すぎてどうしていいのかわからないんだと思います。ちゃんとエンターテインメントとして〈自由なんだよ〉って発信する精度は上げていかなきゃいけないとも思っています」

2017年のEP『C'mon Baby』収録曲“C'mon Baby
 

――ライヴハウスで認められなきゃいけないとか、ネットでバズらなきゃいけないとか、そういう概念とは別の次元で音楽をやっているSeussの活動はすごく魅力的だと思います。

谷本「いろんな音楽の在り方があるんだって、思えるようになりましたね」

――とはいえ、上昇志向はありますよね?

谷本「はい。やっぱり人気は欲しい(笑)」

――だからこそ、9月には〈Fun,Fun,Fun〉を一気にキャパを上げて京都METROで開催した。ここは入場料もしっかり取って、ビシッと気合い入れてやりましたよね?

谷本「そうですね」

――このイヴェントに出演していたのが、Seussとは盟友と言うべきDYGL、前田さんの弟・流星くんを擁するバレーボウイズ、そして、谷本さんと前田さんの前身バンド、DIMの頃からの先輩、踊ってばかりの国。それぞれ出自もスタイルもまったく違う3バンドをひとつの空間で繋ぐことができることは、Seussの強みだと思います。

谷本「ラインナップも当日の内容も、〈Fun,Fun,Fun〉を続けてきたうえでの、ひとつの結果を示せたと思います」

前田「それぞれが、それぞれの美学をしっかり持ったロックをやっていて、だからこそ、僕らならそこを繋げられると思ったし、僕らにしかできないイヴェントになったと思います」

2017年のEP『C'mon Baby』収録曲“Minstrel Show”

 

古き良き音楽のエッセンスを吸収しつつ、いまのポップとして提示していく

――そしていよいよ12月9日(土)、〈Fun,Fun,Fun〉の集大成であるワンマンライヴを大阪・梅田NOON+ CAFEで開催します。

奥畑「今の自分たちができるキャパで、パーティー感を出したいとなった場合、やっぱりNOON+ CAFEだったんですよね」

前田「クラブの匂いですよ。僕らは〈SECOND ROYAL〉とか〈SUNNY SUNDAY SMILE〉とか、主にMETROのイヴェントですけど、DJがやってるパーティーにも、結成したときからずっと呼び続けてもらってる。そういうDJのイヴェントに出たとき、お客さんにどう楽しんでもらうかをいつも考えてます。自分がどう楽しむかにも必死だから、先輩にお酒をねだってみたり(笑)。だから、あの場所の自由さや素晴らしさを知ってるつもりだし、そういうパーティーがしたい」

 

――今回は、会場限定で購入できる5曲入りのカヴァーEP『Good Time Rock’n’Roll』も用意されたとか。

谷本「はい。ライヴでよくやる曲を選びました」

――カヴァーCDの1曲目はここまでの話でも挙がったチャック・ベリーの“Johnny B. Goode”。

谷本「もう飛び道具ですよ」

奥畑「掴みにこれ以上のものはないくらい」

――演奏者から見て、なぜそれだけのパワーがあると思いますか?

谷本「なんでだろう? とにかく楽しい要素が詰まってる」

前田「楽しいことしかない。無駄がない」

谷本「あのギターを聴いただけで、チャックが弾いてる表情とか、浮かんできてアガりますから」

チャック・ベリーが“Johnny B. Goode”を演奏する58年のパフォーマンス映像
 

――2曲目はビーチ・ボーイズの“Surfin' USA”。 ここにもSeussの変化が表れているような気がします。インディー時代は『Pet Sounds』以降を嗜好していたと思うんです。

前田「“Surfin' USA”は、ただ楽しい音楽。そういう意味で今は『Pet Sounds』以前なんですよね。この曲だけ俺が歌っているんですけど、いいスパイスになっていれば」

――3曲目はビートルズの“All My Loving”。この機会にあらためて原曲も聴いたんですけど、やっぱりすごいですね。普通じゃないことをやっているんだけど、それを感じさせずポップに聴かせてくる。いきなり3拍目から歌が入ってくる出だしから、がっちり掴まれますし。

谷本「みんな知ってるし、ときめく曲ですよね。バッキングのギターも3連符なのにスッキリまとまっていておもしろい」

前田「ドラムも、めちゃくちゃシンプルなのにハネもあって、要所で〈なるほど、こんな感じなんだ〉って、ほんと勉強になります」

ビートルズの63年作『With The Beatles』収録曲“All My Loving”
 

――4曲目はラヴィン・スプーンフルの“Daydream”。彼らの“Do You Believe In Magic”は『Today Was Good』でカヴァーされていましたが、今回の曲にまつわる思い出は?

金子「みんな好きな曲なんですけど、いざカヴァーしようとしたときに、僕はビックリするくらいギターを弾けなかったんです。でもこういう感じのオリジナル曲は自分たちにはないから、次に繋げられたらって思います」

前田「ドラムもおもしろいですよ。まともに叩いてるのはギター・ソロのところだけ。あとは淵を叩いてる」

ラヴィン・スプーンフルが“Daydream”を演奏する67年のパフォーマンス映像
 

――最後はサム・クックの“Having A Party”。

前田「これは大合唱したい曲」

――サム・クックといえば、今年リリースしたイヴェントと同タイトルのEP『Fun,Fun.Fun』に収録された“My Little Girl”がサム・クックの“Wonderful World”に似てるという話を、以前谷本くんが話していましたね。

谷本「“My Little Girl”は〈はじめてのチュウ〉に似てるっていう人もいます」

前田「サム・クックは知らない人が多いのかな」

――ウルフルズがカヴァーしてヒットしたんで、そんなことはないと思いますよ。

奥畑「あ、うちの母さんはウルフルズだと言ってた」

サム・クックの62年の楽曲“Having A Party”
 

――Seussの将来像としては、現在のスタンスを堅持しつつ小箱の人気者であり続けるのか、それともポップ・フィールドでのスターをめざしていくのか、どちらでしょうか?

谷本「その2択ならスターですかね。そういった人たちは見たことがあるだろう景色を、僕らはまだ見たことがないんで」

奥畑「えっ!? そうなの? でもどっちも正しい。全部正しい」

――それをいうなら、ウルフルズの立ち位置が理想的なんじゃないですか?

前田「ですよね。あれだけ昔のソウルへの愛に溢れつつ、今のポップとして世の中に受け入れられているということが素晴らしい」

――毎月、入場無料のイヴェントを続けて、ほかのライヴでも確かな感触を得て、ワンマンとカヴァーEPで締める2017年。最後に、来年に向けての見通しを教えてください。

谷本「今年1年、〈Fun,Fun,Fun〉を通して、僕らがめざしていた、のんびりした空気は出せたと思うんです。だから来年は、自分たちの音楽をしっかり外に発信できたらと思います。最近できた新曲は、これまでとはまた違うんですよ。もっとポップカルチャー寄りというか」

――ポップカルチャー寄り?

前田「ロックンロールの型にはまってないというか」

谷本「フレーズはオールディーズなんですけど、前田のドラムはコテコテじゃなかったり。ジャンルレスと言えばジャンルレス」

――オールディーズに接近したことで、いろんな音楽が許容できるようになった感覚が活きているということですか?

谷本「そこはめちゃくちゃ大きいです。自分たちのなかに生まれた新しい感覚があって、一気に出来た曲たち」

前田「それを来年どこかでリリースしようと思ってます」

奥畑「ワンマンでも演奏する予定なんで、楽しみにしていてください」

 


Live Information
〈Seuss presents “Fun,Fun,Fun One Man Show”〉
2017年12月9日(土)大阪・梅田NOON+CAFE
出演:Seuss
開場/開演 17:30/18:00
前売り/当日 ¥2,000/¥2,500(いずれもドリンク代別)
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