noteから桂牧の『バック・グラウンド・ノイズ』がリリースされた。ライナーノートに記された、桂の日常を包囲する風景が日常のタイムラインを逸脱して3.11のあのとき、現れた異形、音の記憶を読む。あのとき、災いの内側に発生した我々の記憶は、もはや近景と遠景に分けて配置され近づこうとしながら常に遠ざけられてしまう統合の失調を患い、消失点のような記憶の後景への退行を生きる。想像的なものを現実的に響かせる道具に満ちた生活の中にあって、ある曲では規則的なリズム、パルスを背景に僅かながら遅れるように音を重ね、音楽に仕上げられたこのアルバムのノイズと楽器の自由な動きは、あの風景にリアルを彩るのだろうか。