岡野弘樹の新作。彼がチューニングされた無数の風鈴を山や港、様々な場所に設置して、その時々の風に委ねるというインスタレーションを始めたのはいつごろだったのか。風はインディアン・フルートを吹き抜ける息に変わって彼の音楽が人の手に委ねられるようになったのも、いつの頃だったのか、はっきりしない。しかし、新作のジャケットの海の鳥居を見ていると、水の面を渡る風が鳥居をくぐり駆けていく様が浮かぶ。彼は今も風に音を聞いているんじゃないかと思った。確かに風はいまも彼の音楽を動かし、自然と彼、そして人を美しく結びつける。あらゆる物を揺らし、動かす不可視の流体、岡野にとって風は音楽だと、改めて共感した。