INTERVIEW

YOSUKEKOTANI 『ANYWHERE』(1)

深夜の静謐な空気に甘く溶け込む孤独なソウル──自身のクロスオーヴァー感覚を模索してきたシンガー・ソングライターが旅のなかで見つけた〈音楽の本質〉とは?

 写真/大橋 仁

 

 ゴスをはじめとしたニューウェイヴの老舗レーベル、4ADからR&Bに影響を受けたインクソンといったアーティストがあたりまえのように登場するテン年代。その流れを先駆けるかのように、2000年代以降、HARVARDAVALONといったグループを通じて、UKUSの先鋭的なインディー・シーンからソウル~R&Bまで、広い視野のクロスオーヴァーを模索してきたYOSUKEKOTANI。彼がリリースする初のソロ・アルバム『ANYWHERE』は、パリカサブランカバルセロナクエンカNYLAラスヴェガスセドナヒロホノルルという世界の10都市を巡る旅の最中に、その滞在先で録音が行われたという。

YOSUKEKOTANI ANYWHERE THEWOLFONTHEHILL(2014)

「発表するしないに関係なく、曲作りはずっと続けているんですけど、その間に作ったアルバムがどうもピンと来なくて。そうこうするうちに、海外に3週間くらい行く機会があったので、旅先という非日常のなかで、自分が好きな作品たちを生んだ土地の空気を肌身に感じながら、最小限の機材で制作してみよう、と」。

 国境を越え、音や情報がやり取りされるネット・コミュニティーに触発されたシーンの動向もリアルなものであるが、彼が身を置いた〈旅先〉という非日常もまたリアルなものであって、そこでの作業にはまったく迷いが生じなかったという。

「海外の音楽ブログをチェックしたり、ネットは活用しているんですけど、それと自分の音楽活動はまた別なんですよね。むしろ、10年以上続けてきた音楽を振り返ったとき、夜、一人でひっそりと聴く音楽やその時間が自分のすべてだったというか、そういうパーソナルな体験や孤独に寄り添う音楽に、自分が考える音楽の本質がある気がして。ここ最近だと、DJコーツェの『Amygdala』やディーン・ブラントの『The Redeemer』にも、そういうパーソナルなものを感じるというか、僕はそうしたアルバムを〈体験系の作品〉と呼んでいるんですけど、自分としても音楽の本質と向き合うような、そんな体験に繋がるようなアルバムが作りたかったんです」。

 MacBookとMIDI鍵盤でビートを組み、メロディーを紡ぎながらマイクに向き合い、約20日間で完成したという本作は、ミキシング・エンジニアにサイケデリックなカオス感覚を内包するIllicit Tsuboi、マスタリング・エンジニアにハーキュリーズ&ラヴ・アフェアほか、ダンス・ミュージックを数多く手掛けているREMサウンドリック・エッシグを起用。無駄が削ぎ落とされた全10曲は、ヒップホップもダンス・ミュージックも通過した音響と、音の間を満たす深夜の静かな空気に孤独なソウルを甘く溶かし込んだ作品へと昇華された。

「HARVARDやAVALONではロックっぽいことをやったこともあるし、ダンス・ミュージックも形だけ作っても、本当の意味で自分のなかにロックやダンスの要素がないから、違和感があったんです。もっとも、ソウル、R&Bは日本人が真正面からやっても物真似にすらならないと思うんですけど、インディー・シーンが停滞する一方で、設けられたルールのなかで自由度を増しているいまのR&Bにこそオルタナティヴな感覚があると思っていますね。アルバムそれ自体は、聴かれることを考えて意識的に作った作品ではないんですけど、結果的に辿り着いたいまのスタイルには自分なりに納得しています」。

 

▼文中に登場したアーティストの作品

左から、HARVARDの2011年作『HAHVAHD』(AWDR/LR2)、インクの2013年作『No World』(4AD)、DJコーツェの2013年作『Amygdala』(Pampa)、ディーン・ブラントの2013年作『The Redeemer』(Hippos In Tanks)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

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