近年はマルーン5で活躍する鍵盤奏者ながら、インディア・アリー曲でのグラミー受賞や、初作『Emotions』(2005年)の頃からの日本での評判もあり、R&B好きの間では歌い手としても裏方としても馴染み深い名前だろう。今作はキャッシュ・マネーに残した『New Orleans』(2013年)以来となる久々のソロ作(本国では自主リリースで入手困難のため、日本盤化は快挙!)。その間には『Black Radio 2』への曲提供も経験しただけに注目の輪が大きくなったのは間違いないが、もとよりスティーヴィー似だったワンダーな節回しは幕開けの“First Began”から濃密に渦巻き、ルーツ色の濃い音空間を芳醇に染め上げていく。ハミルトーンズを伴ってBJ・ザ・シカゴ・キッドがお返し参加した“Everything’s Gonna Be Alright”のディアンジェロ風なノリも快いし、ビー・ジーズ“How Deep Is Your Love”のカヴァーも素晴らしい。キーヨン・ハロルドらの演奏を配しつつ、故郷を表題に掲げた前作以上に地元色も好ましく滲み出た名品だ。