INTERVIEW

ハンバート ハンバート 『むかしぼくはみじめだった』

カントリーの聖地で初の海外録音を決行。アメリカーナなサウンドのなかに日本情緒が息づく新作は、新鮮な輝きに満ちていて……

ハンバート ハンバート 『むかしぼくはみじめだった』

 カントリーフォークアイリッシュ・トラッドなどさまざまなルーツ・ミュージックを下地に、親しみやすいメロディーとユニークな歌詞で独自のサウンドを生み出してきた佐藤良成(ヴォーカル/ギター)と佐野遊穂(ヴォーカル)から成る男女デュオ、ハンバート ハンバート。これまで国外のアーティストとの共演も多かった彼らが、新作『むかしぼくはみじめだった』で初めての海外レコーディングに挑戦した。二人が向かったのはカントリーの聖地・ナッシュヴィル。プロデュースを依頼したのはブルーグラス界の重要人物、ティム・オブライエンだ。

ハンバート ハンバート むかしぼくはみじめだった SPACE SHOWER(2014)

 「2006年にティムが来日したとき、彼の音楽が大好きだったので前座をやらせてもらったり、いっしょにセッションをしたりしたんです。そのときにティムが〈アメリカでいっしょにレコードを作らないか〉って言ってくれて、こっちは大喜びで準備していたんですが……」(佐藤)。

 ところが、実生活でも佐藤のパートナーである佐野の妊娠が発覚。一旦、話は保留になったまま気が付けば7年の月日が流れて、ようやく今回約束が実現されたというわけだ。

  「ナッシュヴィルって、昔のアメリカのホームドラマの世界そのままみたいな街なんですよ。庭の木にブランコがぶら下がっているみたいな。スタジオも開放的で、私が歌っていた部屋には窓があって向かいのアパートの人が花に水をあげているのが見えるんです。あと、プロデューサーなのにティムがみんなの使ったコーヒーカップを洗っていたりして(笑)」(佐野)。

 そんなリラックスした雰囲気のなか、レコーディングには地元のトップ・ミュージシャンたちが集まった。

 「演奏は素晴らしかったですね。演奏が良いから歌声がキレイに聴こえるし、録音しているときにピッチやリズムも取りやすい。だから歌唱のクォリティーがどんどん上がっていく」(佐藤)。

  「すごく上手くなったような気分で歌えました」(佐野)。

 今回のレコーディングのいちばんのポイントは「良いミュージシャンたちの良い演奏でレコーディングすること」だったと語る佐藤。〈聖地〉に対する憧れよりも、自分たちの腕を磨くためにナッシュヴィルを選んだ二人だったが、自分たちのオリジナリティーを出すための苦労もあったという。

 「演奏は良いんですけど、方向性がちょっと違うんです。ブルーグラスは悲しい歌詞でも陽気に演奏するんですけど、僕らはそこまではしたくなくて。その方向性の違いを言葉で説明するのが難しかったですね。〈もう少し具合悪い感じで〉みたいに変な注文をすることが多くて(笑)。そのうちティムが、〈君たちが何を求めているのか、ちゃんと汲み取るのが難しい〉って頭を抱えてしまった」(佐藤)。

 それでもなんとか自分たちが求めるフィーリングを理解してもらおうと、歌詞の内容を伝えるなど言葉を尽くして説明しながら作り上げた本作。アメリカーナなサウンドのなかにも、しっかりと日本的な叙情が息づいているこの作品を聴けば、〈ハンバート ハンバートがやりたかったこと〉が真っ直ぐに伝わってくるはずだ。

 「曲が持つエネルギーって、曲が出来た瞬間がいちばん強い。その感動を録音した音で再現しようとこれまで努力してきたんですけど、今回のアルバムで初めてその輝きをCDに封じ込めることができた気がします」(佐藤)。

 この素晴らしいアルバムを道しるべにして、ハンバート ハンバートの新たな旅が始まる。

 

▼ティム・オブライエンの作品を一部紹介
ティム・オブライエンの2010年作『Chicken & Egg』(Howdy Skies)

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▼ハンバート ハンバートの関連作品を一部紹介
左から、ティム・オブライエンの2010年作『Chicken & Egg』(Howdy Skies)、2007年のサントラ『砂利』(ミディ・クリエイティブ)、2007年のサントラ『包帯クラブ』(ミディ)、2009年のくるりのトリビュート盤『くるり鶏びゅ~と』(NOISE McCARTNEY)

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 ここではハンバート ハンバートの近作を紹介。2001年のCDデビュー以来リリースを重ねてきたレーベルから2008年の6作目『まっくらやみのにらめっこ』(ミディ)を最後に移籍した2人は、2009年にスコットランドのバンド、フィドラーズ・ビドと共演した『合奏』(プランクトン)をリリース。改めて自身のルーツ=トラッド音楽と向き合います。そして2010年のフル作『さすらい記』(ユニバーサル)と翌年のミニ作『ニッケル・オデオン』(同)で毒とユーモアのある歌詞×フォーキーなサウンドという自身の個性を磨き上げると、2012年にはCOOL WISE MANとのコラボ盤『ハンバート・ワイズマン!』(同)を発表。オリジナル曲はもちろん、ハンバート“おなじ話”のロックステディ版などゴキゲンな化学反応を堪能できる一枚となっています! *bounce編集部
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40周年プレイリスト
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