ライ・クーダーもチェック済みの噂の楽団がいよいよデビュー!

 ピーター・バラカンが監修する音楽フェス〈Live Magic!〉での狂騒的な熱演が評判を呼んだ福生生まれの面白民謡楽団、民謡クルセイダーズ。いよいよファースト・アルバム『エコーズ・オブ・ジャパン』が登場する。海の向こうではライ・クーダーもきっと喜んでいるに違いない(「いつかきっと彼らを手伝える時がくるはず!」というコメントを残している)。『エコーズ・オブ・ジャパン』と言えば、和モノリスナーならば東京キューバン・ボーイズの61年作を即時に思い出すだろうが、歴史的名曲“お祭りマンボ”を生み、江利チエミとのコラボでハイブリッドな民謡ポップスを作ったキューバン・ボーイズへの憧憬やシンパシーをそこかしこから確かに感じられる。でもって、見砂直照さんらの魂は俺たちが継ぎますんで、と、控えめながらも確固たる主張が作品全体に反響しているところも頼もしい。

民謡クルセイダーズ エコーズ・オブ・ジャパン P-VINE(2017)

 そんな彼らのアプローチは、先達たちが行ってきた和洋折衷化の取り組みをどれだけストリート寄りの感覚で出来るか、というのが肝。できるだけ賑々しく、そこはかとなくいかがわしく。楽曲のアレンジが雑多かつ奇天烈になったのは単なるサービス精神じゃなく方向性を煮詰めた結果だろう。チープなリズム・ボックスの音色に彩られた“おてもやん”をはじめ、アフロビートな“ホーハイ節”やブーガルーな“炭坑節”、そしてエチオピアン・ファンクな“秋田荷方節”など、本格的な節回しを披露するヴォーカルのフレディ塚本を軸にクルクルと表情を変えていくスパイシーでエキゾなアンサンブル。遊び心という名の実験精神が随所で渦巻いており、愉快なスリルを生み出している。ドロッとしたアングラな空気が流れていながらサウンドがめっぽう開放的な点もいい。これから先、〈モア〉がどういうスタイルになるのかも興味深いが、何にせよ彼らがいま東京で最高に面白いダンス・バンドであることは間違いない。聴けば何より夏が恋しくなるだろう。