日本では珍しい突然のストリーミング配信で話題を呼んだアルバムが、内容を大幅に更新して100分超の2枚組に結実した。〈戦時下の恋人たち〉がテーマとなり、全編にロマンティックかつサイケなムードが漂うが、音楽的な特徴となっているのはファンキーなリズム。なかでもトラップの影響が色濃い“クジラ”を筆頭にヒップホップへの傾倒が顕著で、C.O.S.A.とKID FRESINO、さらには泉まくらというゲストの人選やさりげないオートチューン使いにもそれがよく表れている。異色なところでは、ジュークという枠組みを超えて暗躍する奇才CRZKNYの信号音をフィーチャーした“抱きしめたり”も印象的。〈到達点の先の実験的な大作〉という意味で、2010年代の『24時』とも言えよう。さよなら! 街の恋人たち。