INTERVIEW

なぜ北陸で独自の音楽カルチャーが生まれたのか? 富山発TOKEI RECORDS主宰が語る、街と風土が育んだサウンドの秘密

VARIOUS ARTISTS『Looks』

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  • 2017.12.26
なぜ北陸で独自の音楽カルチャーが生まれたのか? 富山発TOKEI RECORDS主宰が語る、街と風土が育んだサウンドの秘密

近年、日本海側の北陸地域に大きな注目が集まっている。2016年版の47都道府県調査によると、〈移住幸福度ランキング(子育て世代)〉のトップ3は福井/石川/富山の北陸3県が独占。その豊かな自然と住みよい環境もさることながら、北陸新幹線の開通によって都心との物理的な距離も縮まり、現在の北陸は文化的にも独自の発展を遂げているという。

もちろんそれはローカルな音楽シーンにおいても例外ではない。ここ数年は全国各地のインディー・バンドが北陸地域をツアーで訪れるようになり、オブ・モントリオールやトップスら海外バンドの来日公演が行われるケースもちらほら。地元を拠点とするアーティストの動きもかなり活発で、全国的な知名度をもつバンドも着々と現れてきている。端的にいって、今ここでは非常に興味深いインディー・カルチャーが育まれているのだ。

そんな北陸シーンの充実ぶりを牽引しているのが、富山を拠点とするインディー・レーベル〈TOKEI RECORDS〉。ポスト・ロック・バンド、interior palette toeshoesの一員でもある山内コウイチによって2012年に設立されたこのレーベルは、北陸三県で活動するバンドのリリースを担うのはもちろん、地域に密着した音楽イヴェントも数多くプロデュース。所謂レーベルの枠組みにはとらわれない活動ぶりで、北陸シーンに大きなうねりを巻き起こしている。

そんな〈TOKEI RECORDS〉の設立5周年を記念して、2018年1月10日(水)に2枚組のコンピレーション・アルバム『Looks』がリリースされる運びとなった。ポスト・ロック/ポスト・ハードコアを中心にあらゆるジャンルを跨いでみせた本作によって、北陸および〈TOKEI〉への注目度がさらに高まることは、まず間違いないだろう。ということで、今回はそんな〈TOKEI〉のコウイチ氏にインタヴューを敢行。北陸シーンの特色と、これまで/これからの歩みに迫ってみた。

VARIOUS ARTISTS Looks TOKEI(2017)

【ディスク1】
1. ekesetene / shelter
2. general fuzz sound system / 海抜203メートル
3. herpes / samba
4. interior palette toeshoes / tautology
5. Oavette / anig
6. KYON / forever
7. sabusave / 20170428
8. meimei / Risë
9. shitoneleft / mustache disturbance
10. Frogs in Flight / Starless
11. film. / Northbound

【ディスク2】
1. やまも / あんばやし
2. rima kato+ten tote / biological clock
3. basementcolor / nighthawks
4. noid / 80番シアターの閉館
5. vivid branch / The flagship
6. ザ・おめでたズ / 元旦インダハウス
7. YOCO ORGAN / やりっぱなし
8. KONCOS / The Midnight Song feat. SRSAHNN
9. smoug / Levi
10. Water Side / 時間と重力
11. ゆーきゃん / ノアの蛙

 

こんな田舎で普通にやっていてもおもしろくないし、他とは違うことをやらなきゃ

――まずはコウイチさんが自身のバンド、interior palette toeshoesを結成した2002年頃の富山のシーンはどんな状況だったんですか?

「その頃の富山には、僕らみたいなインストのポスト・ロックを受け入れてもらえるような土壌がまだなくて。自分たちが出演できるイヴェントはあまりなかったんです。そうなると結局は自分たちでやるしかないってことで、どんどん企画をやっていこうと」

――ライヴハウスのブッキングには頼らず、自分たちでイヴェントを主催するところからはじめてみようと。

「僕らは最初からそういう感じでしたね。それでお隣の金沢からも自分たちの好きなバンドを呼んだりしていくうちに、音楽的にも価値観的にもリンクしていける人たちが少しずつ増えていったんです。で、そうしていくうちに僕らもだんだん欲が出てきて、EVISBEATSとか54-71、mouse on the keysやBALLOONSなど、明らかに自分たちとは釣り合わないクラスの人たちにも声をかけはじめて(笑)」

interior palette toeshoesの2014年のライヴ映像
 

――そこには〈県外のミュージシャンも呼んで地元のシーンを活性化させたい〉みたいな想いもあったのでしょうか?

「いや、どちらかといえば〈カッコいいバンドと一緒にイヴェントがやりたい〉〈その人たちのライヴが観たい〉という気持ちのほうが大きかったかな。でも、そうしていくうちに〈なんか富山でイヴェントを引き受けているバンドがいるらしいよ〉みたいな感じで認識してもらえるようになって。今度は逆に県外や国外からも〈ツアーを廻るときに富山でやらせてもらえませんか?〉と声をかけてもらえるようになっていったんです」

――イヴェントは主にどのような会場で?

「富山にはハコ自体があまりないので、古民家とか能楽堂とか映画館とか、わりといろんなところでやってきました。せっかく自分でイヴェントを打つんだから、どうせならライヴハウス以外のところでもやりたいなと思ったんです。〈こんな田舎で普通にやっていてもおもしろくないし、なにか他とは違うことをやらなきゃ〉というのがいつも頭の片隅にあって、結果的にそういう発想になったというか」

 

売れるかどうかっていうところで音楽をやっていないのが、地方シーンのおもしろみ

――なるほど。そこからはどんな経緯でレーベル設立に向かっていったのでしょうか?

「お互いにシンパシーを感じられるバンド同士で〈一緒になにかやりたいね〉という話になったんです。それで金沢のNINGEN OKとYOCO ORGAN、富山のgeneral fuzz sound systemと僕らの4組で、レコードを作ろうと。そしたら僕がみんなから〈こういうの仕切るの、得意だよね?〉みたいに言われて(笑)」

――それが2012年にアナログ盤の12インチでリリースした第1弾コンピレーション『Four For Phono』に繋がったと。

「そうなんです。で、レコードを流通させるためには仮でもレーベルが必要だなということになり、それで作ったのがTOKEI RECORDS」

――このレーベル名にはどんな由来があるんですか?

「特にこれといった意味はないんですけど、日本語をローマ字にするっていうイメージは漠然とありました。あと、日本語として世界に通用する言葉ってあるじゃないですか。たとえば〈TSUNAMI〉とか〈KAWAII〉みたいな、そういうのがいいなっていう話もしていたんですけど、最終的にはそれが脱線して〈TOKEI〉になったという(笑)」

――『Four For Phono』の4組は音楽性もそれぞれ違っていて、特にYOCO ORGANのようなラップ・グループも参加しているのが非常に興味深かったです。

「そういうジャンルを越えた出会いがあったことは、確かにひとつのポイントだったのかもしれないですね。実際、YOCO ORGANのドンドン前に進んでいく感じが僕にはすごく刺激的だったし、そもそもラップ・グループの人たちから〈一緒にやろうよ〉と声をかけられることなんてなかったから、これはおもしろくなりそうだなって。

YOCO OGRANの2017年の楽曲“MUSIC MAGIC”
 

とはいえ、『Four For Phono』を出した後のことはあんまり考えてなかったんですよ。でも、これがありがたいことに〈リリースを手伝ってほしい〉と声をかけられることになってきて。それなら地元でモヤモヤしているようなバンドのサポートをしていけたらいいなと」

――『Four For Phono』のリリースにはそれだけの反響があったということ?

「それなりにあったと思います。『Four For Phono』のレコ発は入場無料でやったんですけど、そのときは100人以上の人が集まってくれて。で、そこに来ていた子が今回の『Looks』にも参加してくれた〈やまも〉のメンバーだったり、今回の収録アーティストもたくさん会場にいたんですよ」

――いい話ですね。5年前のレコ発にお客さんとして来ていた人が、今ではTOKEIの一員になっていると。

「僕にとっても、彼らのような若い世代と繋がれたことはすごく大きかった。そもそもTOKEIから最初に出した4枚――VA『Four For Phono』、general fuzz sound system『Showa period』(2013年)、film.『SORA』、sabusave『#634232』(供に2014年)はどれも友達の作品だったんですけど、やまもに関してはそうじゃなかったんです。友達の紹介で聴いてみたらすごく良かったので、それでやりとりを重ねていくうちに〈この子たちのサポートをしていきたいな〉と。そうやって初めて共同で音源を作ったのが、やまもの『YAM AMO』(2016年)だったんです」

general fuzz sound system『Showa period』収録曲“ワレオモウユエニワレオモウ”のライヴ映像
film.『SORA』のトレイラー映像
 

――コウイチさんがやまもに感じた魅力とは?

「やまもはマンドリンを主旋律とするバンドで、そういうちょっと変わった形態のおもしろさに惹かれたのが、まずひとつ。あと、彼らはメンバー個々の抱えている音楽性がすごく幅広くて、たとえばギターの子(あずままさひろ)はherpesっていうハードコア・バンドもやっていたりするんですよ。そうやってメンバー間で異なるセンスを持ち寄っているところが、すごくかっこいいなと。あとは彼らの人柄ですね」

やまも『YAM AMO』収録曲“ホームタウンホリデー”のライヴ映像
herpesのライヴ映像
 

――やまももherpesも『Looks』に参加されていますね。

「今回のコンピには22バンドが参加しているんですけど、このなかには複数のバンドを掛け持ちしている人も結構いるんです。まあ、それってプレイヤーが足りてないという意味でもあるんですけど(笑)。僕の周りにいる人たちはそうやってバンドを掛け持ちすることにより、各々がやりたい音楽をちゃんと実現できているんですよね。〈地元にもこんなバンドがいたらいいのにな。でも、いないから自分でやっちゃおうか!〉みたいな。みんな、そういう感じなんですよ」

――素晴らしいですね。流行やステータスには捕らわれず、あくまでも音楽的にやりたいことを優先していると。

「確かにみんな、そこまで人受けを意識していないのかも。少なくとも、売れるかどうかっていうところでは音楽をやっていないんですよね。それをたくさんの人がフックしてくれるかどうかは別として、地方シーンのおもしろみはそういうところじゃないかなって」

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