2017年に30周年記念盤が登場した『The Joshua Tree』は、若かりし日の自分が心奪われ、何度も何度も聴いた作品だった。そしていま、この新作に心奪われ、何度も何度も聴いている。素晴らしいアルバムだ。タイトル通り純真なロック少年時代に回帰した前作『Songs Of Innocence』(2014年)と対を成す一枚。〈大人〉へと戻り、良い具合に肩の力が抜けた演奏に乗せて、U2は愛を歌う。アメリカが、世界が醜悪さを極めたいまこそ愛なのだ、と言わんばかりに。本作にも参加しているケンドリック・ラマーが怒りで世界を繋ぐのならば、自分たちは愛で繋ぐのだと言わんばかりに。大陸的なメロディーの美しさに聴き惚れながら、この奇跡のようなバンドと同じ時代を生きられる幸運を噛み締めたい。