COLUMN

マルク・ミンコフスキ『モーツァルト:レクイエム』 メンデルスゾーンの明るさ、屈託のない響きをオリジナル楽器で

(C)Marco Borggreve

メンデルスゾーンの明るさ、屈託のない響きをオリジナル楽器で

 ミンコフスキが指揮台に上がると、オーケストラのサウンドが明るみを帯びる。いささか生真面目なキャラと言われがちな東京都交響楽団とブルックナーの交響曲を奏でても、厳めしい雰囲気がずいぶんと緩和され、温泉にでも浸かったようなほっこりした心地で聴かせてくれたものだ。

 音色は明暢そのものだが、その音楽はエッジを効かせて雄弁なまでに荒ぶり、ときとしてデモーニッシュな響きで客席を圧倒する。数多くのバロック・オペラを手がけてきたことによるフレキシブルな感性が彼の持ち味といっていい。

 1962年パリ生まれ。アーノンクールやノリントンらの次世代を担う古楽系指揮者だ。1982年にレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルを創設、バロックを中心としながら、チャイコフスキーやストラヴィンスキーまでの幅広い音楽をレパートリーとして演奏してきた。

 ミンコフスキとレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルは、東京オペラシティでは、過去に3度公演している。初来日の2009年にはラモーとモーツァルト、そしてハイドンの2プログラム。2013年にはシューベルトとモーツァルトの作品を演奏し、その明快かつ躍動に満ちた響きで聴衆を魅了したものだった。今回の来日公演では、ロマン派の本流に挑むべく、オール・メンデルスゾーン・プログラムが組まれた。

 ミンコフスキとメンデルスゾーン。一瞬不意を突かれたような心地にもなるが、これほど相性のいい組み合わせもなかなかない。

 メンデルスゾーンには、これまで後期ロマン派のスタイルで演奏され続けてきた歴史がある。弓を弦に押しつけたまま濃厚に歌い、ドイツ風のガッシリと組み立てられたプロポーションで響かせるような。これでは、逆に〈腰の軽いシューマンやブラームス〉のようになってしまい、この作曲家の良さが半減してしまう。

 しかし、ミンコフスキの手にかかれば、若々しいメンデルスゾーンの自由闊達さが前面に出てくるのではないだろうか。この作曲家特有の細やかな弦の動きが軽快かつシャープに彫琢され、緩徐楽章は優美さに彩られる。

 そして、なんといっても、その愉悦感。明るく、屈託のない響きこそ、メンデルスゾーンの真骨頂。ミンコフスキにまったくふさわしいレパートリーだ。

 会場は、オープンから20年経って内装の木材が馴染んだおかげで、陰影感のある響きが実感できるようになった東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル。古楽器オーケストラならではの微細に変化する響きをよりリアルに伝えてくれるはずだ。

 


LIVE INFORMATION

マルク・ミンコフスキ指揮
レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

○2018年2/27(火)19:00開演
会場:東京オペラシティ  コンサートホール  
曲目:メンデルスゾーン:序曲《フィンガルの洞窟》op.26/交響曲第3番イ短調 op.56《スコットランド》/交響曲第4番イ長調 op.90《イタリア》
www.operacity.jp/

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