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エルメート・パスコアル『Viajando Com O Som』 76年スタジオセッション! ブラジル音楽の歴史に残る未発表音源集

photo:divulgacao

 

ブラジル音楽の歴史に残る未発表音源集!

 ブラジル音楽界が誇る〈無形文化財〉。世界中の音楽家から深いリスペクトをうける楽聖・エルメート・パスコアール。今年1月にはおよそ6年半振りとなった来日公演が実現、その圧倒的な存在感を見せつけたかと思えば、8月にはなんと自身のグループ名義としては15年振りとなる新作もリリース。来日公演のメンバーたちで構成されたグループによる演奏で、一糸乱れぬ組織力と、弾けんばかりのパッション、めくるめく即興性が詰め込まれた全てオリジナル曲による2枚組の超大作。80歳を超えてなお“枯れない泉”の如き創造性の豊かさを知らしめる傑作であった。

HERMETO PASCOAL Viajando Com O Som (The Lost '76 Vise Versa Studio Session) unimusic(2017)

 そして今回リリースされたのはエルメートが1976年に残していた未発表音源集。UKの〈ファーアウト〉というレーベルからのリリースで、近年ではアジムスの復活作『Fenix(2016年)』やアルトゥーロ・ヴェロカイのカムバック作『Encore(2007年)』をリリースするなど、今もっとも注目すべきブラジル音楽レーベルのひとつだ。

 1976年、トロピカリアの仕掛け人としても知られる名作編曲家ホジェーリオ・ドゥプラが所有していたサンパウロのヴァイス・ヴェルサ・スタジオにて行ったという2日間のセッションを収めたものが本作。マイルス・デイヴィスの『Live Evil』に参加したのが1971年。初のリーダー作『A Musica Livre De Hermeto Pascoal』を発表したのが1973年。世界的な名声を獲得した傑作『Slaves Mass』を発表したのが1977年。つまり本作のセッションが行われたのはエルメートが最も実験性に満ちた時期であったということ。マイルスのセッションへの参加によって受けた影響を咀嚼し、その独創性を発揮していくまでの過度期における貴重な記録が40年もの時を経て遂に日の目を見ることとなったのだ。

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